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【PSU】小説スレ

1 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:11:10.72 ID:YM27VcKe
なんかおちたっぽいので立ててみた

シリアスからネタモノまで
長編からショートショートまで
妄想を文章にしたい人はこのスレに書けばいいと思うよ。

でもモロエロは↓へよろしく
ファンタシースターユニバースのエロパロ
http://sakura03.bbspink.com/test/read.cgi/eroparo/1157960314/l50

2 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:14:09.31 ID:ffjO9+RA
官能小説マダー?

3 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:42:37.05 ID:YM27VcKe
13 名前: 名無しオンライン 投稿日: 2006/11/05(日) 06:27:10.01 ID:oWeZQssH
【1】
HIVE総攻撃から1000年後 ー

それまで平和な日々を送ってきたグラール太陽系であったが、その平和が静かに崩れようとしていた。
種族の中でこれといった特殊能力も無ければ秀でた部分ももたないヒューマンは、いつしか多種族から見下されるようになってきていた。
そこに大きく不満を持った者がいた。
彼は、同士を集め、どんな種族よりも優れた力を求め、日々研究に研究を重ね、一つの物に目をつけた。
《SEED》である。
彼は多大な資料からそれに近いものをいくつも作りだし、そして遂に、、、

15 名前: 名無しオンライン 投稿日: 2006/11/05(日) 06:56:48.29 ID:oWeZQssH
それから一年後 ー

「俺もいよいよガーディアンズの一員になれるんだな!」
初日の訓練を控えたディノスは顔をはたくと気合いを入れた。
ディノス・ターナー、種族はヒューマン、子供の頃から憧れてきたガーディアンズライセンスを見事に取得し、今日から訓練に入るのだった。
平和な日々が続いてきたグラールでは大きな事件もそれほどなく、ガーディアンズの出番も大してあるのもではなかった。
ディノスは小さな頃に危ない所をガーディアンズに救われて以来、正義のヒーローのように憧れてきたのだった。

集合場所にたどり着くと、一人の男性が立っていた。
ディノスに気づくと軽く手を上げ、こちらに向かってきた。
「初めまして、あんたがディノスさんかい?俺はラムダっていうんだ。俺たちでペアを組むらしいな、よろしく頼む!」
「ディノスで構わないよ、これからよろしくな!」
ラムダは同じヒューマンだがディノスよりも背が高く、体つきも良かった。短めに刈り込んだ髪に、あごにはやしたヒゲがよく似合っている。
簡単に自己紹介をしていると、向こうから担当教官らしき人物がやってきた。

4 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:43:42.77 ID:YM27VcKe
21 名前: 続き [sage] 投稿日: 2006/11/05(日) 16:33:50.29 ID:oWeZQssH
「あんたたちかい?あたしの担当する訓練生ってのは。」
「あ、はい!」
「ディノスです!そしてこっちが、、」
「ラムダです。」
「そうか、あたしがあんたたちの教官担当するアスカ・ウェーバーだ、よろしくな。」
「えっ!?ウェーバーて、もしかして、、、」
「あぁ、その通りだディノス。あたしの祖先は《イーサン・ウェーバー》だ。よく聞かれるからな。」
そう言うとアスカはフッと苦笑してみせた。
「あ、すいません、つい、、」
「なに、もう慣れたよ。うちの家系は血筋なのか代々ガーディアンズに所属しててねぇ、腐れ縁てやつなのかもね。」
アスカは笑い飛ばしてみせた。教科書でその名をよくみてきたディノスはまだ興奮を隠せないでいるようだった。

22 名前: 続き [sage] 投稿日: 2006/11/05(日) 16:50:40.88 ID:oWeZQssH
【2】

「では、早速だが最初の訓練で行うミッションについて説明する。今回のミッションは、惑星パルムで行う。」
惑星パルムは、キャストの街であったが、イーサンの働きにより、キャストのヒューマンに対する見方が変わってからというもの、互いに共存しあうようになっていった。
しかし現代では、再び見下すような考えを持つ者も増え始めたせいで、あまり芳しくない状況へと動きつつあった。
「パルムでは今、次々にキャストが襲われるという事件が多発しているようでな、なんでも人であって人でない、、ようなものに襲われているらしい。」
「新手のモンスターか何かですかね?」
「それをこれから調べに行くんだ。作戦は現地に向かいながら説明する。」

そう言うと三人はパルムへと向かった。

5 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:46:27.19 ID:YM27VcKe
28 名前: 1/10 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 04:30:13.01 ID:CRO/ZDtV
うん・・・・ご主人様を起こさなきゃ・・・・
起動直後のはっきりとしない意識の中で私はご主人様の姿を探すが
本来ベッドがあるべき所にはベッドが無く、ご主人様の姿も勿論無い。
代わりに目に映るのは無数の機械、自分の体からも無数のケーブルが伸び機械と接続されている。
ここ何処だろう・・・明らかにマイルームとは違う周囲の状況に違和感を覚える。

Gコロニーのメンテナンスルームなのかな・・・?
定期メンテナンスだったっけ?次の定期メンテナンスは来月だった筈だけど・・・
過去のデータを検索してみるが上手く行かない。
おかしいな・・・どうしちゃったんだろう私・・・
データリンクは・・・生きてるみたいだな・・・
ガーディアンズのメインコンピュータにアクセスし現在位置情報を取得しようと試みる。

現在位置確認・・・惑星パルム、ホルテス・シティGRM本社内メンテナンスルーム

あれ・・・GRM本社・・・?何で私こんな所に・・・・?

「どうやらお目覚めのようですね。気分はいかがですか?」
突然声をかけられて初めて私はこの部屋に一人きりでは無かった事に気付く。
他人の反応にも気がつかないなんて、やはりいつもの自分では無い。
先ほど感じた違和感は既に不安にまで成長している。
声の主はキャストの男性だった。格好からしてGRMの技術者だろうか?
誰だろう・・・声紋を照合してみるが該当データが見つからない。

「現在位置の確認は済んでいるようなのでここが何処かは分かっていますね?」
通信状態をモニタリングしていたのだろう、キャストらしからぬ丁寧な言葉遣いで男はそのまま言葉を続ける。
「あなたは1週間前にミッション中の事故で激しい損傷を受けました。
Gコロニーでは修復が困難な状態だったのでこちらで修理させて頂いていたんですよ。」
ミッション中の事故!?事故と言う言葉に私の不安は更に増大する。
「ご、ご主人様は・・・ご主人様は無事なんですか!?」
「ご安心を、あなたのご主人様はご無事です。軽い怪我はなさいましたが事故の翌々日から
ガーディアンズの任務に復帰しているはずです。」
ああ・・・良かった・・・
想像していた最悪の事態が否定され私はほっと胸を撫で下ろす。

安心した私の様子を確認して男は更に言葉を続ける。
「既に物理的な修復は完了しています。
断片化した記憶の再構成が完了するまでは多少の記憶の混乱はあるかもしれませんが
しばらくすれば事故の前とほぼ同じ状態になるでしょう。
ただ、一部のデータは損傷が激しく完全に修復出来ませんでした。
部分的に欠落があると思いますがご了承下さい。」

6 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:47:02.41 ID:YM27VcKe
29 名前: 2/10 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 04:30:39.18 ID:CRO/ZDtV
部分的に欠落という言葉に不安が再び頭をよぎる。
生み出されてから今までご主人様と過ごさなかった時間は殆ど無い。
私の世界は殆どがご主人様との記憶で構成されている。
もしそれに欠落があったら・・・恐る恐るご主人様に関する記憶を検索する。
記憶の再構成がさっきより進んでいるのか多少もたつきながらも検索が完了する。

穏やかな光をたたえたグリーンの瞳、褐色の肌、決して背は高くないが無駄の無い均整な体つき、
特徴的なビーストの耳、私に話しかける時の低いけど優しい声・・・紛れも無く私のご主人様だ。
私が人型に進化したときの嬉しそうな顔、合成が成功して褒めてもらった事、
合成が失敗しても怒らずに私の頭を撫でてくれた手の感触
ご主人様と一緒にミッションをこなした日々、次々と浮かぶご主人様の記憶。

私の世界がほぼ完全な姿で残っているのを確認し私は安堵する。
ただ事故当日の記憶だけは欠落しているのかどうやっても見つからなかった。
GRMの技術者も事故の詳細に関しては知らないらしい。

「あの・・・ご主人様の所にはいつ戻れるんでしょうか・・・」
「先ほども言いましたが物理的な修復作業は完了しています。
後ほどテストを行って問題が無ければ戻っていただいて構いません。」
「そのテスト、今すぐやってもらえないでしょうか?」
私の言葉を聞くや技術者はふふっとかすかに笑う。
口調もそうだけどこの人キャストにしてはちょっと変わってるな・・・
「テストは午後から行う予定でしたが予定を繰り上げて今から1時間後にテストを始めましょう。
準備をしてきますので少々こちらで待っていて下さい。」

3時間後、ご主人様は私の記憶と寸分違わぬ姿でシャトルから降りてきた私を出迎えてくれた。
シャトルに乗ってる間中ご主人様に会った時に何て言おうか考えていたが
ご主人様に会った途端に考えて居た言葉は全て吹き飛び
ただごめんなさい・・・ごめんなさい・・・と繰り返す事しか出来ない私を
ご主人様は前と変わらぬ優しい瞳で見つめていた。

7 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:47:34.35 ID:YM27VcKe
30 名前: 3/10 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 04:31:28.84 ID:CRO/ZDtV
1週間ぶりのご主人様の部屋は多少散らかっていたが以前とほぼ変わりない様子だった。
掃除を済ませ、夕食の準備をし夕食を食べ終わった後にご主人様から話を聞いた。
SEEDによる侵食地帯の調査中に、再び飛来したSEEDフォームが私達のすぐ傍に着弾し
私がご主人様をかばった為にご主人様は軽症で済んだが私は大怪我を負ってしまったらしい。

「だからお前が謝る事は無い、謝るのは俺のほうだ。」とご主人様は最後に付け加えた。
「そんな事無いです、PMがご主人様を守るのは当たり前の事ですし・・・
それに・・・私がSEEDフォームが飛来するのをもっと早く察知してれば・・・」
そう言う私の頭を撫でる無骨な手。

「とりあえず今日はもう寝るぞ。今日は休暇を貰ったが明日からまたミッションだ。
お前は本調子じゃないみたいだから、明日は店番でもしててくれ。」

「私は連れてって下さらないんですか・・・?」

「明日のミッションは大したミッションじゃないから俺一人で大丈夫だ。
それにお前が居ない間は店の方もほったらかしだったからな。
一文無しになる前に店の方よろしく頼むよ。」

「はい・・・ご主人様がそうおっしゃるなら・・・」

「じゃあお休み。後で明日のスケジュール確認しておいてくれ。」
「了解しました。お休みなさいませ。」

ご主人様が寝たのを確認してルーム内のコンソールから
明日のスケジュールと店の状態を確認する。
モトゥブで原生生物の調査か。確かにそんなに難しいミッションじゃない。
店の方は売り上げ0メセタ、メセタの残高も大分減っている。
戦利品を売りさばかないと経費で赤字になるのはどうにかならないのかな・・・
その分一攫千金なんて事もあるけど、家計を管理する身にもなって欲しい。

とにかくこのままだとご主人様の言うとおり一文無しになるのは間違いなさそうだ。
一緒にミッションに行けないのは残念だけどお金が無くちゃ何にも出来ないし・・・
私が居ない間に手に入れた戦利品も結構良い値で売れそうな物があるから明日は店番頑張ろう。

8 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:47:59.58 ID:YM27VcKe
31 名前: 4/10 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 04:31:54.96 ID:CRO/ZDtV
翌朝、ミッションに向かうご主人様をスペースポートまで見送った後に私は店番をしていた。
売れ行きは好調でご主人様が帰ってきたら喜んでくれるに違いない。
店の方も一段落着いたので売り上げを集計していると扉の開く音がした。
「いらっしゃいませ」と声をかけながら扉の方を振り返ると
そこに立っていたのはGRMで目を覚ました時に居たキャストだった。

「こんにちは、どうやら具合は良好のようですね。」
相変わらずの丁寧な口調で男は私に話しかける。
「はい、おかげ様で。その節は有難うございました。」
「私は自分の仕事をしたまでですから礼には及びません。お元気そうでなによりです。
ご主人は不在のようですがミッションに行ってらっしゃるのかな?」
この人ご主人様と知り合いなのだろうか・・・?

「今はモトゥブでミッション中だと思います。そろそろ帰ってくる頃だとは思いますが
ご主人様に何か御用でしょうか?伝言があれば私が伺いますが。」
「時間が無いので今日の所はおいとまさせて貰いますよ。
ご主人様によろしくお伝えしておいてください。」
とだけ言うなり男は店から出て行ってしまった。

何しに来たんだろうあの人・・・私の様子を見に来ただけって感じじゃないし・・・
ご主人様と知り合いみたいだったけど・・・帰ってきたら聞いてみよう。

夕方になりご主人様が帰ってきた。
「お帰りなさいませ。今日のミッションはいかがでしたか?」
「ああ、原生生物の調査だけで退屈なミッションだったけどそれなりにいい収穫だったよ。」
店の方はどうだった?今日は美味いメシでも食えそうかい?」
戦利品を私に渡しながらご主人様はそう言った。

私はちょっと誇らしげに今日の売り上げデータをご主人様に見せる。
「凄いじゃないか!やっぱりお前が居ないと駄目だな。」と言いながら私の頭をぽんぽんと叩く。
「もう、いつまでたっても子ども扱いなんですから。」
「嫌か?嫌なら辞めるけど」と言いつつも手が止まる気配は無い。
無言で首を横に振る私をご主人様は笑いながら見ている。
悔しいけど心地良い手の感触に私はしばし身を委ねる。

9 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:48:39.64 ID:YM27VcKe
32 名前: 5/10 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 04:32:21.21 ID:CRO/ZDtV
「そうだ、今日誰か俺を訪ねて来なかったか?」
私の頭を撫でながらご主人様が私にそう尋ねた。
「あ、はい、私がGRMでお世話になったキャストの方がお見えになりましたけど
ご主人様のお知り合いだったんですか?」

ふいにご主人様の手が止まる。
「思っていたよりも早かったな・・・」
厳しい口調でご主人様がそう呟く。さっきまでの穏やかな表情から、一変険しい表情になる。
「ご主人様?どうかなさいましたか?」
「話は後だ出かける準備をしてくれ。装備も忘れるな。」
「え、あ、はい」私はしどろもどろになりながらご主人様の装備を整える。

「何やってる、お前も準備しろ!」
「わ、私もですか・・・?」ご主人様の厳しい口調にただならぬ気配を感じながらも
私は急いで自分の装備を整えた。
「準備出来ましたけど・・・」
「よし、じゃあ出るぞ」
「ご、ご主人様、一体何処へ・・・?」
「話は後だ、いいからついてこい!」

言い終わるが速いかご主人様は部屋を飛び出していた。私は慌ててご主人様の後に続く。
一体何処へ行くんだろう・・・あのキャストは何者・・・?
疑問が頭をよぎるがそんな事を考えていてはご主人様を見失ってしまう。
リニアラインの連絡通路を抜けてプラント方面に向かっているみたいだが
悠長に現在位置を確認している暇など無い。
ぐんぐんスピードを上げていくご主人様を私は必死で追い掛けた。

時折こちらを振り返り、私がついてきている事を確認しているようだったがスピードを緩める様子は無い。
1時間程走っただろうか、プラント内の一角に辿り着くとご主人様は脚を止めた。
私はご主人様の横まで辿り着くとその場に座り込んでしまった。
どうやらオーバーヒートを起こしているようだ。
ご主人様に色々聞きたいことはあったが疲れ果ててそんな余裕も無い。

10 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:49:00.53 ID:YM27VcKe
33 名前: 6/10 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 04:32:42.38 ID:CRO/ZDtV
現在位置を確認する・・・どうやらSEEDフォームに侵食されて破棄されているプラントのようだ。
こんな所で何を・・・と思ったがご主人様のただならぬ様子に私は口を開く事すら出来なかった。
「現在時刻は?」とふいにご主人様が口を開いた。
「18時25分34秒・・・誤差は±0.01秒以内です・・・」私は慌ててそう答える。
それっきりご主人様は再び黙ってしまった。

ふいに頭に手の感触を感じた。ご主人様の手だ。
表情は相変わらず厳しいが私の頭を撫でる手からは以前と変わらぬ優しさが伝わってきた。
それだけで私には十分だった。

「お待たせいたしました。」
静寂を破ったのは声の主はあのキャストだった。
私の頭を撫でているご主人様の手に心なしか力がこもる。

このキャスト・・・いったい何者・・・?

最初の時は起動直後だったから気付かなかったとしても、今回は私のセンサーも正常に稼動している。
連合軍の特殊装備でもしていない限り全く反応を示さない何てことは通常では有り得ない。
連合軍・・・?よくよく考えればデータベースに記載されていないGRM職員など居るはずが無い。
瞬時に戦闘モードに移行した私をご主人様が無言で制した。

「遅かったな博士、準備は出来ているのか?」
「申し訳ございません、多少準備に手間取りましたが準備の方は整っております。
そちらも約束の品、ご用意出来てるでしょうか。」
「ああ、確認してくれ。」

ご主人様はいつの間に持っていたのだろう、金属製のケースを男の足元に放り投げた。
博士と呼ばれた男がケースを開ける。そのケースの中の物体を見て私は息を飲んだ。
Aフォトン・リアクター・・・・・?
何故ご主人様がAフォトン・リアクターなんかを・・・・?

「Aフォトン・リアクター、間違いなく頂戴いたしました。それではこちらへどうぞ。」
博士は踵を返すと部屋の隅に置いてあるコンテナの方へ歩き出した。
どうやら私に言っているようだ。私はどうしていいか分からずご主人様の顔を見る。
「ご主人様も、一緒に来てください・・・」
ご主人様はやれやれと言ったような顔をしたが、私の頭をぽんと叩くと
無言で私について来るよう促し博士が向かった方に歩き出した。

11 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:49:18.38 ID:YM27VcKe
34 名前: 7/10 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 04:33:20.01 ID:CRO/ZDtV
コンテナの中には「私」が居た。何度も見ている自分の姿だ、間違うはずは無い。
「私」と寸分違わぬ姿をした物がそこには横たわっていた。
「ご主人様・・・これ・・・何ですか・・・?どうして私が・・・」
「説明してやってくれないか、説明する間もなく飛び出してきたもんでな。」
沈痛な面持ちでご主人様が博士に向かってそう言った。

「説明するのは構いませんが、そのままでもよろしいのですか?」
「ああ、何かあった場合は俺が責任を持って対処するよ。」
「そうですか。あなたの手に余ると判断した場合は私の方で対処させて頂きますが構いませんね?」
「・・・そうだな、そうしてくれ。」
一体何が始まるというのだろうか。そんな私の疑問をよそに博士が「説明」とやらを始めた。

「ガーディアンズに支給されているPMは24時間その状態を監視されているのはご存知ですね?」
「はい・・・」そんなのは常識だ。
本部のコンピュータによって現在位置から現在の状態までモニタリングされている。
だからこそミッションに行った先で何らかのトラブルがあった時に
現在位置の確認や迅速な対処が可能なのだから。

「PMに採用されているAIが我々キャストとは違い一部機能が制限されているのもご存知ですね?」
「はい・・・」
PMはあくまでもガーディアンに奉仕する役割を担っている。
一般のキャストと違ってガーディアンズの活動に必要のない機能が抑制されているが
だから何だというのだろう。

「仮にあなたが自分の立場に疑問を抱いたり、ご主人に危害を加えようとしたりしたとしましょう。
そんなこと無いと思われるかもしれませんが自律型のAIでは意外に良くある事なのです。
その場合本部でそのような思考が確認されると即座にデータリンクを通じて修正プログラムが送信されます。
PMは全く自覚無くそれを受け入れ、記憶の改竄とAIの調整が自動的に行われる仕組みになっているのです。
またPMから送られた思考データはガーディアンズを通じGRM社のデータベースに蓄積され、
新型AIの開発にフィードバックされています。
つまりあなた方PMはガーディアンズの奴隷でもあり、我々キャストの奴隷でもあるのですよ。」

「奴隷だ何てそんな・・・!私そんな風に思った事ありません・・・!!私はご主人様とっ」
「黙って聞くんだ。」
博士につかみかかろうとする私を、ご主人様は声と体で制止する。
丁度ご主人様に後ろから抱きかかえられるような格好だ。

12 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:49:33.44 ID:YM27VcKe
35 名前: 8/10 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 04:33:45.34 ID:CRO/ZDtV
「それに博士が言っている事が本当かどうか分からないじゃないですか!
こんな得たいの知れない人の話を信じるなんてご主人様もどうかしてます!」
そうだ、博士が言ってる事が本当かどうかなんて分かりはしないのだ。
同意を求める用にご主人様を見つめるがご主人様は黙って首を横に振る。

「先ほど説明したようなシステム、便宜上セキュリティシステムとでも呼びましょうか。
今のような行動もセキュリティシステムの制御下では事前にブロックされている筈なのです。
現在あなたのAIからはダミーのデータがガーディアンズ本部のデータベースに送られるようになっていて
一時的にセキュリティシステムの制御を離れているので今のような行動も可能なのです。
ただ、この方法で本部を騙すのにも限界がある。いずれは発覚してしまうでしょう。」
相変わらずの丁寧な口調で博士は淡々と話を続ける。

その言葉に私は愕然とする。確かに今まで私は他人に危害を加えるような事等一度もしたことが無かった。
ましてやご主人様の腕の中で暴れるなんて。それに私のセンサーを完全に騙すような装備を持っていて
データベースに記載されて居ないキャストなんて余程の重要人物か、あるいは犯罪者だ。
犯罪者がGRM社内に入り混んでいる事は考え辛いとなれば余程の重要人物としか考えられない。
私はがっくりとうな垂れたまま博士の説明の続きを聞いた。

「PMが完全に自由な思考を持ち、自由に行動する為にはセキュリティシステムを完全に切り離す必要があるのですが、
セキュリティシステムはハードウェア、ソフトウェアにより幾重にもプロテクトが掛かっています。
稼動しているPMからセキュリティシステムを切り離すのは非常に困難で、物理的破壊、データロストの危険性をはらみます。」

「そこで全く新規にセキュリティシステムが最初から搭載されていない素体およびAIを作り
データベース内からあなたの今までの記憶データをサルベージし移植したのがこの素体です。
この素体に現在のあなたのAIの思考パターンを移植する事によって
あなたは本来あなたが得るべきであった感情や記憶を取り戻し
ガーディアンズとキャストの奴隷から解放される事になる。」

13 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:49:52.31 ID:YM27VcKe
36 名前: 9/10 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 04:34:02.96 ID:CRO/ZDtV
「ガーディアンズに支給されている個々のPMは、元は同じ素体ですが成長過程においてかなりの個体差が生まれます。
通常ならばGRM社のデータから元となるPMと同じ型番の素体を作るだけなのですが
今回はあなたのご主人のたっての要望で、今のあなたとほぼ同様の素体を作らせていただきました。
そのために多少の工作をしてあなたをGRM本社で解析する必要はありましたが、
ほぼ現在のあなたと同じ状態の素体を作る事が出来ました。」

工作って・・・?じゃあもしかしてミッション中の事故って言うのも全部嘘だったの・・・・?
ご主人様を見上げるとちょっとバツが悪そうに頷いた。

「セキュリティシステムによって書き換えられる前の思考データ
つまりGRM社のデータベースからサルベージし、この新たな素体に書き込まれているデータですが
これは主人に対する不満であったり、他人に対する攻撃衝動だったりと言うような情報が含まれて居る事が多々あります。
勿論どのような人も他人に対する不満等は抱えている訳で大抵の場合問題は起こりませんが、
中には殺人衝動にまで発展している場合もあり、その場合困った事にもなったりします。」

「そんな!私がご主人様を殺したいと思ってるなんて!!」

「あなたがそうだと言っているわけではありません。中にはそう言うケースもあるという事です。
実際に私が手がけたケースで記憶の復元直後にPM、この場合は元PMと言うべきでしょうか。
その元PMによって元の主人が殺される例が2件程ありました。」

「でもそんな・・・そんな事って・・・・」
主人に対して殺意を抱くような関係の人達がPMの記憶の復元をしよう等と思うのだろうか・・・?
私はご主人様と一緒に居るだけで幸せなのに、本当の私はご主人様を殺したいと思っているかもしれない?
そんな馬鹿な。

「今から話す内容はあなたにとっては残酷な内容かもしれませんが・・・」と言って博士はご主人様の方をチラッと見た。
ご主人様は無言でうなずく。私を後ろから抱きかかえるご主人様の手に力が入る。
一体今から何を聞かされるのだろう・・・私はただ・・・ご主人様と一緒に居られるだけで・・・
ご主人様に頭を撫でてもらえるだけで幸せだったのにっ

14 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:50:15.09 ID:YM27VcKe
37 名前: 10/10 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 04:34:21.63 ID:CRO/ZDtV
少し間を置いて博士が口を開く。
「PMが主人であるガーディアンの命令を聞き、任務を忠実にこなすのに最も都合のいい状態があります。」

ああ・・・駄目だ・・・聞きたくない・・・聞いちゃ駄目だ・・・聞いたら私の世界が
私の全てが・・・壊れてしまう・・・駄目だ、駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ
私を抱きかかえるご主人様の腕に更に力が入る。私はその腕から逃れようともがき暴れるが
ご主人様の腕力は強く、それから逃れる事が出来ない。

博士はそんな私の様子を意にも解していない様子で言葉を続ける。
「PMが主人の喜びを自分の喜びだと思うような状態、更に言えば主人の為に働く事を喜びと思う状態であり
更には主人と一緒に居るだけで幸せを感じるような状態です。
恋愛感情と呼ばれる物に近い感情ですが、PMのAIは主人にそのような感情を抱くように調整されているのです。」

「ご主人様!帰りましょう!!この人が何言ってるのか私ぜんぜんわからないです。
あ、明日もミッションあるんですよね!
私もう大丈夫ですから、明日のミッションには私も連れてってください!
この前みたいなヘマはもうしません、ちゃんとご主人様も守って私もちゃんと元気で。
私が居ないとお店も大変ですもんね。今日なんか一杯一杯お客さん来てくれたんですから。
お店の商品もいっぱい売れちゃったからまた補充しなきゃだめですもんねっ!!
一週間お休みしてた分ももっともっともっと頑張りますからっ
ご主人様の大好きなコルトバサンドも作りますね!
合成だって頑張っちゃうんですから。うん、今なら属性40%以上のが出来そうな気がします。
きっと、きっと、きっと出来ますからっ、作って見せますから!
上手く出来たら頭撫で撫でしてくださいね。子供扱いしないで下さいなんて言ってましたけど
ほんとは私あれ大好きなんです。ご主人様に頭撫でて貰ってるだけで幸せなんです。
いえ、ご主人様と一緒に居るだけで幸せなんです!だからっ、だからっっっ!!!!!」
半ば絶叫しながらご主人様の方に振り返ると私はご主人様に微笑みかけた。

それは今までに私がした事が無いような媚びた、卑下した、哀願するような笑みだったのだろう。
ご主人様は私の表情に気を取られ、私を抱く手の力が一瞬緩んだ。
その隙にご主人様の腕から逃れナノトランサーから愛用の大剣を取り出し博士に向かって飛び掛った。

「この人が悪いんですよね!この人がご主人様に変な事を吹き込んだから!!!」

私の振り下ろした大剣は博士を一刀両断にした筈だった。
しかし振り下ろされているべき剣はそこには無く、一刀両断にされているべき対象は
変わらぬ姿で私の目の前に立っている。一瞬思考が停止する。
博士の後ろにいつの間にか現れている、ブラスターを構えた連合軍の兵士の姿と
カランと言う剣が地面に落ちる音で全てを理解した。
後ろを振り返ると私に駆け寄ってくるご主人様の姿と、地面に落ちている肘から先の両手に握られた大剣。
「うわあああああああああああああああああああああああああああああ」
肘から先の無くなった腕を見て私は絶叫する。そこで私の意識は、途切れた。

15 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:50:57.69 ID:YM27VcKe
43 名前: 11/13 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 19:36:23.69 ID:CRO/ZDtV
目を覚ましたのはさっきまでの廃プラントでは無く、どこかの部屋だった。
鎮静プログラムでも投与されたのだろう、さっきまでの興奮状態が嘘のように私の頭は冷静だった。
現在位置を確認しようとするが本部のコンピュータに繋がらない。データリンクが遮断されているようだ。
データリンクから隔離されている場所などそうそうある訳が無い。
体にかすかに加速度を感じる所から推測するに、博士の所持する軍艦なのだろうか。

センサーが復帰し部屋の一角に私は見慣れた反応を発見する。
ベッドから体を起こしその姿を確認する。
「ご主人様・・・」
私の声に気付き、ご主人様が歩み寄ってくる。
「すまなかった。」とだけ言ってご主人様はベッドの横で歩みを止めた。

「ご主人様・・・傷・・・」よく見るとご主人様の体はあちこちに傷が出来ていた。
「すいません・・・」
「なに、大した傷じゃない。それよりもお前の方が心配だ。」
私肘から先を吹っ飛ばされたんだっけ・・・と今更思い出す。
両手を確認すると吹き飛ばされたはずの肘から先はきちんと付いている。
動かしてみると多少違和感があるが動作にも特に問題は無さそうだ。

「元のパーツは損傷が激しくて復元するのに時間がかかるんで
肩から先を全部予備のパーツと取り替えたそうだ。
ああいう事は良くある事らしくてね。全くあの博士は何から何まで用意周到だよ。」
とご主人様は肩をすくめてみせる。

「ご主人様・・・」
「ん?どうした?」
「ご主人様は博士から事前に話を聞いていたんですよね?」
「ああ、さっきお前が聞いたのと全く同じ説明を受けたよ。」
「だったらご主人様は・・・何で私の記憶を復元しようなんて思ったんですか?
私に殺されるかもしれないのに・・・何で・・・」

ご主人様はちょっと困った顔をしたが、すぐに真面目な顔で
「お前になら殺されてもいいと。」そう言った。
「そんなっ・・・」私は絶句する。

ご主人様は「冗談だよ。」とおどけながら言葉を続けた。
「お前と初めて会ってからもう5年になるな。
一番最初の丸っこいのから良くここまで成長したもんだ。」
5年・・・そう5年前・・・ご主人様がガーディアンズに入隊した日・・・・
今より少し細い体、鋭い眼光、モトゥブで用心棒をしてたというだけに
最初は怖い人だな・・・と思ってたっけ。

16 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:51:21.15 ID:YM27VcKe
44 名前: 12/13 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 19:37:54.54 ID:CRO/ZDtV
「最初の頃は何食わせてもやれ微妙な味だの古くないですかだの言うから
なんだこいつと思ってたもんだ。」ご主人様はかすかに笑いながらそう言う。
「そ、そんな昔の事、今更言われてもっ・・・」
「合成も苦手でなぁ、必死の思い出手に入れた貴重な基盤と材料を
何度モノメイトにされた事やら。」
「最近はそうでも無いじゃないですかっ。確かに近接武器以外は苦手ですけど・・・」

「その近接武器をこないだ失敗してモノメイトにしたのは何処の誰だったかな?」
「ご主人様は合成した事無いからそう言う事言うんですっ。合成って凄く難しいんですから。
一生懸命やってもたまには失敗しちゃう事だって・・・あります・・・!」
必死に弁解する私を見てご主人様は微笑む。

「戦闘型に進化したお前をミッションに連れてけるようになったばっかりの頃は良く迷子になってたよな。
目の前に敵が居るのにぼーっとしてたり全く手のかかるお嬢さんだったよ。」
「戦闘データが全く無い状態だったからしょうがないんです!
今なら迷子にも、敵の前でぼーっとしてたりなんてしませんっ!」

「身の回りの世話から店の運営、ミッションのパートナーまでほんとお前が居て助かった。
お前が居なかったら今頃俺は一文無しでどこぞでのたれ死んでただろうよ。」
「ご主人様はお金に無頓着すぎるんです。お金はもうちょっと計画的に使わないと。」
「そうだな。気を付けるよ。」と軽く笑いながらご主人様は言う。

「モトゥブで用心棒をしてた頃に比べりゃ稼ぎは悪いが
ガーディアンズに入隊してからの5年間、幸せだったよ。
全部、お前のおかげだ。」
「そんな・・・別に私なんにも特別な事なんか・・・」

「お前の喜ぶ顔を見ているだけで俺も幸せな気分になれた。
きついミッションもお前と一緒だったら平気だった。
金が無くてメシが食えないときもお前が作ったモノメイトを食ってりゃ平気だった。
お前が居たから、俺を必要としてくれる人が居たから俺はここまでやってこれたんだ。」

「ご主人様・・・」

「博士の話を始めて聞いたときは愕然としたよ。信じられなかった、いや信じたくなかった。
だってそうだろう?お前と過ごした5年間が、俺の世界が全部作り物だったなんて。
頭を撫でてやるだけでちょっと照れながらも幸せそうな顔をするお前が
本当は俺のことを憎んでいるかもしれないなんて信じられる訳無いじゃないか。」
ご主人様の目からは涙が溢れ頬を伝っていた。

「でも信じざるを得なかった。お前も勘付いてると思うが博士は連合軍関係者だ。
軍用マシナリーとAI開発の第一人者らしい。博士に色んなデータを見せ付けられたよ。
捏造なんじゃないかと疑ったりもしたがこんな戦艦を運用できるぐらいの
権力を持ってる奴が俺みたいな一介のガーディアンにそこまで手の込んだ嘘を吹き込んで何になるってんだ。」
ご主人様は自嘲気味にそう吐き捨てる。

「だから俺は・・・この5年間がなんだったのかを・・・
お前と過ごした5年間が単なる作り物だったのかそうじゃないのかを確かめたいんだ。」
振り絞るようなご主人様の声。瞳からは涙が止め処なく溢れ出している。

17 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:51:46.63 ID:YM27VcKe
45 名前: 13/13 [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 19:42:19.41 ID:CRO/ZDtV
「私はそんな事知りたくない!ただご主人様と一緒に居られればそれで良かったのに!」
突然の私の叫びにご主人様は少し驚いた様子で目を見開くが、すぐに悲しそうな目で私の方を見つめた。
その目に私の焦燥は加速され、叫びが溢れ出す。もう自分でも何を言ってるか分からない。
「ご主人様勝手です!自分が納得出来ないからって私を騙してこんなところまで連れてきて。
聞きたくも無い話を無理やり聞かせて!!!私はどうする事も出来ないじゃないですか!!
私の世界を返してください!!ご主人様と幸せに暮らしていた私の世界を!!!!」

ご主人様は無言で私の叫びを受け止めている。

「こんな所まできて、こんな話まで聞いて・・・無事に帰れる何てことありえませんよね・・・
軍艦でしたっけここ・・・逃げ出す何て不可能ですね・・・
そういえば私、今は思考に制限かかって無いんでしたっけ。
ふふ、だったらこんな事も出来るんですよね。」
と言いながら私はナノトランサーから銃を取り出し銃口をこめかみの辺りにあてがう。

「おい、やめろ!!」ご主人様の叫びも私の耳には届かない。
ご主人様が私の手から銃を奪おうとするが私はとっさに身を翻す。

「そう・・・最初からこうしていればよかったんです・・・
ご主人様との記憶が私の全てでした、私の世界でした。
それが作りものだろうとなんだろうと・・・私は幸せだったんです・・・

ご主人様は嫌なのかもしれませんが、私は記憶を取り戻してご主人様を憎むぐらいなら
そんな記憶無くても良いです・・・作り物の方がましです・・・
ご主人様おかしいですよ。所詮私は作り物。作り物に本物の愛を求めてどうするんですか?

Aフォトン・リアクター。あれモトゥブのミッションでローグスに奪われてた事になってた奴ですよね?
ふふ・・・馬鹿だなぁご主人様、私の為なんかにそんな事までして。お尋ね者ですよ?
涙まで流しちゃってほんと馬鹿みたい。

さようなら馬鹿なご主人様。そんな馬鹿なご主人様の事好きでした。
ご主人様は作り物の愛じゃ満足できなかったみたいですけど
人形にそこまで求められても困ります。
私にとってはそれが真実だったんですから。」

私は引き金を引く。銃声が轟く。

18 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:52:16.48 ID:YM27VcKe
58 名前: 14'/?? [sage] 投稿日: 2006/11/07(火) 22:12:54.11 ID:6zYMQls9
「どうして・・・どうして邪魔するんですか!!!!」
私の絶叫が部屋中に反響する。私の手に銃は無い。
私が引き金を引く寸前に、ご主人様の銃から放たれたフォトンが私の銃を吹き飛ばしていた。
乾いた音とともに銃が床に転がる。

「どうして・・・どうして・・・・・・」
立っている気力もなくその場に崩れ落ちる私をご主人様の腕が支える。
ご主人様はそのまま私の体を抱きしめた。ご主人様のぬくもりが、優しさが私を包み込む。
ほんの数時間前までは当たり前のようにすぐそばにあったぬくもり。

ご主人様の顔を見上げる。ご主人様の両目からは涙が溢れ頬を伝っている。
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
一体何に対して謝っているのか自分でも分からなかったが、それ以外に言葉が見つからなかった。
「わかった、わかったからもう泣くな。」
と言われて私は自分の頬を流れる物の感触に気付く。

「え・・・・?」
勿論私に涙を流す機能等ついていない。ご主人様の流した涙が私の頬に落ちてきてるだけだ。
だがご主人様の言うとおり私は泣いていた。
私の苦しみ、悲しみを全て受け止めてくれるご主人様の流す涙。
それは間違いなく私の涙だった。

直後、私の想いが堰を切ったように流れ出す。
「ご主人様は私の全てなんです。私の世界なんです!ご主人様と一緒に居る事が私の幸せなんです!
この想いが作りものだなんて思いたくないです・・・そんなの嫌です!
・・・でも怖いんです・・・ご主人様を傷つけるかもしれないと思うと、怖いんです・・・
だから・・・」
続きを言おうとした私の口は何かに塞がれ言葉を発する事が出来ない。
ご主人様の顔が目の前にある。もう私のAIは爆発寸前だった。

呆然とする私の耳元でご主人様が囁く。「大丈夫だ・・・」
その言葉に「うわぁぁ・・・」と情けない声をあげご主人様の胸にすがりつく。
「全くどこの駄々っ子だ。」ご主人様が私の頭を撫でながらそう言った。
全くだ、ご主人様の前で我侭を言ってわんわん泣きじゃくるPMなんて聞いたこと無い。
自分の事ながら私は思わず吹き出してしまった。

「でもご主人様もさっきまで散々泣いてたじゃないですか。」
と、ちょっとおどけた口調で言ってみる。
「うん、まぁ、これは、その・・・なんだ・・・」と恥ずかしそうに口ごもるご主人様を見て
私はまた吹き出してしまった。

「なんだよ、人の顔見て笑うな。」ちょっと怒った口調のご主人様。
「だって酷い顔してますよ、ほら。」と言ってナノトランサーから取り出した鏡をご主人様の前に差し出す。
「・・・確かに・・・ちょっと他人には見せられない顔だな。」ご主人様は鏡を見て神妙な顔でそう言う。
その様子がおかしくて私はまた吹き出してしまう。それにつられてかご主人様も笑う。
二人の笑い声が狭い部屋の中に響き渡っていた。

19 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:52:40.77 ID:YM27VcKe
59 名前: 15/16 [sage] 投稿日: 2006/11/08(水) 01:19:38.76 ID:sy8cN6gl
ひとしきり二人で笑った後しばしの沈黙が流れる。
心地よい沈黙。一生この心地よさに身を委ねて居られればと思う。
だがそうも行かない。私は意を決して口を開く。

「ご主人様、博士はどちらに?」
「どこなんだろうな。『落ち着いて二人でお話しする時間が必要でしょう、結論が出たらご連絡下さい。』
って言ったっきり俺とお前を残してどっかいっちまった。
まぁビジフォンですぐ連絡つくだろうよ。どうせこの部屋も監視されてるだろうし。」

「あの人・・・何者なんですか・・・?」
「ああ、軍関係者でAIと兵器開発の第一人者・・・ってのはさっき言ったか。
どうもPMの人権獲得を目指して極秘裏に活動している組織があるらしくてな。
博士はその組織の有力な支援者の一人らしい。」

「そんな組織があるなんて・・・」
「連合政府内の考えではその組織の存在は公にせず秘密裏に処理したいらしい。
組織の全容は連合政府も掴めていなくて諜報部がやっきになって調査してるんだと。
全く連合政府のキャスト連中だって今のPMみたいな状態から今の地位を獲得するのに苦労したんだろうに
いざ自分達が権力を握ったらそれを守るのにご終身と来たもんだ、ふざけた話だよ。」

「俺らが博士とコンタクトを取ってる事はばれてないはずだ。博士の方で色々工作してるみたいだからな。
行方不明者として処理されるか、Aフォトン・リアクターの横流しがばれて手配されるか・・・
まぁどっちにしろ真っ当な生活は出来ないのは間違いない。」
「ご主人様・・・」
と言いかける私をご主人様は無言で制する。

「俺が望んでやった事だ、お前が何も気にする事は無い。
俺は作り物の幸せな世界よりも、辛くても本物の世界が知りたかった。
それは、お前もそうだろう?」
「はい・・・」

「それに本当の世界が辛いとは限らないじゃないか、少なくとも俺とお前を縛る物は何も無い。
苦労はするかもしれないがお前が居れば俺は大丈夫だ。」
「はい・・・私もご主人様さえ居れば・・・!」
どちらからとも無く唇を重ねる。幸福感に全身が包まれる。
突然、ビジフォンの着信を告げるアラームが鳴り響き博士の姿が現れる。
私とご主人様はあわてて離れる。

「お取り込み中のところ申し訳ありませんが、時間の方が残り少なくなってきております。
お手数ですが至急研究室までいらしてください。」
相変わらずの丁寧な口調でそう告げると博士の姿は消えた。

「そう言えば・・・ここ監視されてたんですよね・・・・」唇を離し自由になった口で思い出したように私はそう呟いた。
「そ、そうだったな・・・」ご主人様は耳まで真っ赤になっている。
「全部・・・見られちゃってますよね・・・」私も恥ずかしさでAIが暴走しそうだ。
「まぁいいさ、見せ付けてやろうぜ。PMが主人を殺すなんて言ってる奴に俺達は大丈夫だってな。」
「ご主人様・・・その台詞・・・すごい恥ずかしいですよ・・・・」
「う、うるさいっ!さっさと行くぞっ!」

相変わらず耳まで真っ赤になりながらご主人様は私に手を差し伸べる。
私は満面の笑みを浮かべながら「はいっ!」っと元気良く答え、ご主人様の手を取った。
ご主人様の手に引かれ私は歩き出す。歩みを速め私の手を引くご主人様の横に並ぶ。
もう大丈夫、ご主人様と一緒なら私はどんな事だって乗り越えて行ける。心からそう想えた。

ふと、ご主人様の顔を見る。ご主人様と目が合い微笑みかける。
ご主人様はちょっと照れくさそうに、でも優しく私に微笑み返す。
ご主人様が歩みを止めるのに合わせて私も歩みを止める。
眼前にある扉を二人で開いた。

20 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:53:01.90 ID:YM27VcKe
60 名前: 16/16 [sage] 投稿日: 2006/11/08(水) 01:20:08.89 ID:sy8cN6gl
一週間後、モトゥブの辺境の砂漠を歩く二つの影があった。
片方はビーストの男、もう片方は一見小型のキャストの様だが一般的なサイズよりもさらに一回り小さい。

「目的地まであとどれぐらいだ?」水筒の水を飲みながら男は少女に問いかける。
「このままの速度だと後1時間程で到着する予定です。」
「ふう・・・それにしても遠いな・・・博士ももうちょっと近くに降ろしてくれてもよかっただろうに・・・」
「しょうが無いじゃないですか・・・私達をモトゥブに降ろすだけでも大変なのに。
連合軍に見つかりでもしたらどうするんです?」と諌める様に少女は男に答える。

「くそっ、博士の事を思い出したらまた腹立ってきた・・・あの詐欺師めっ」
「あれだけ大騒ぎしていざ研究室に行ったらしれっとした顔で
『あなたの記憶は既に完全な状態で復元されてます。もちろんAIの方も機能制限等全くされてないものですよ。』
ですもんねぇ・・・流石に私もちょっと殺意を覚えましたよ・・・」呆れた顔で少女はそう言った。

「やっぱり一発ぶん殴ってやっとけばよかったぜ。」
憤然とした様子でそう吐き捨てると男は歩みを速める。

「あーもう、ご主人様待ってくださいよう。」少女は男を追いかける。
「ご主人様は辞めろって言ったろ?俺はもうお前のご主人様じゃないんだ。」
「そういわれてもご主人様はご主人様ですし・・・」
「何か他にも色々言い様があるだろう。」
「うーん・・・こういう時は何て呼ぶのがいいんでしょうか。
ちょっと古いデータだを参考にすると”あなた”とか”ダーリン”とかありますけど・・・」
「・・・・まぁいい・・・目的地はまだか?」
「この辺のはずなんですが・・・あ、あの洞窟そうじゃないかな?」と少女は少し先の洞窟を指差す。

洞窟の入り口の前に辿り着き、二人は歩みを止める。
「PM解放組織のアジト・・・か・・・」
「ちょっと緊張しますね・・・」
「追っ手は来てないだろうな?」
「はい、数時間前から半径1km以内に原生生物以外の反応は確認してません。」

「よし、行くぞ」男は洞窟の中に足を踏み入れる。
少女は男の後をついて行く。数m進んだ所で少女は脚を止め、後ろを振り返る。
洞窟の入り口からは光が漏れている。
今まで歩んできた道、何も知らずに過ごしていた日々、もう戻れぬ世界。
ふ、と少女は微笑む。別れを告げる様に。
そして少し先を歩いている男の背中を確認し、再び微笑むとその背中に向かって走り出した。

21 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:53:55.00 ID:YM27VcKe
52 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 23:22:09.74 ID:mq+KY8Cm
太陽と星霊の輝きに背いて


第一話「デルタという男の日常」

夢を見ていた。
「ああ、またこの夢か」と思った。
不思議な話だが、夢を見るたびに、この前見た夢の続きだとか、
前にも見たことがある夢だ、とか、冷静に判断できる自分がいる。
でも、きっと起きたら、夢を見たことすら覚えていないのだろう。
だから、今自分がいるこの”夢の世界”は、自分の目覚めと共に消えてしまうのだ。
そして、この夢を見ている自分自身も、ひょっとしたら・・・自分ではないのかもしれないな、と思う。

・・・夢の中の自分は空を見上げていた。
空は快晴だ。周囲を見渡すと、たくさんの人が居て、同じように空を見上げている。
・・・「ワァッ」と、歓声が上がる。遠くに見える大きな建物から、不思議な赤い光が発せられ天に昇った。
同時に、青い空から、まばゆい青い光の柱が降り注ぐ。不思議な光景だ。
そして、放たれた赤い光と降り注ぐ青い光が交わる。
夢の中の自分は、空に向かって大きく手を伸ばした。
何かを・・・いや、誰かを待っていた気がする。そう、待っていたんだ。長い、長い間・・・
(ああ、そうだ。ここで・・・)
ここで、何が起こるのだろう?いや、分かっている。何が起こるか知っているんだ。
きっと前にもこの夢は見たんだ。そうだ・・・
―次に来るのは、大きな衝撃と、苦痛、そして絶望―



・・・声が聞こえる。
”デルタ・・・起きて・・・”
(・・・ん・・・あと5分・・・)
”・・・早く・・・約束・・・”
(・・・静かにしてくれ・・・分かってるさ・・・ああ、分かってたよ・・・)


「・・・様!・・・遅刻・・・遅刻・・・」
・・・だんだんと、意識がはっきりしてきた。
「デルタ様!起きてください!また遅刻しちゃいますよ!!」

・・・遅刻・・・なんのことだ?遅刻・・・チコク・・・?
「あああああああっ!!うわああああ!!」
飛び起きる。そして時計を見る。・・・遅刻だ!それも完全に遅刻だ!
「なっ、なんで起こしてくれなかったんだよ!また遅刻じゃないか!」
「・・・えーとですね、ワタシは何度も何度も起こしましたよ?
デルタ様がその度に、あと5分、あと5分と申し上げましたから、ワタシは命令通りにですね」

「もういい!」

シャワーを数十秒で終えると、即座に服を装着する。本当に、ナノトランサー様々だ。
パートナーマシナリーの”コトリ”は呆れた顔でモノメイトを差し出す。
少しムッとした顔でそれを奪い取ると、ぽいっと口に頬張り、ルームを出た。

22 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:54:21.46 ID:YM27VcKe
53 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 23:38:03.54 ID:mq+KY8Cm
この数ヶ月、拡大するSEEDに対抗する為、ガーディアンズは組織力の強化を目的とし
老若男女問わず、構成員の増員を行っていた。そして、デルタも大量募集枠の中で入隊した一人である。
元々彼は”誰かの為に”だとか”正義の為に”といった大層な思想を持っているわけではない。
ニュースもあまり見ないし、SEED被害が実際にどの規模で各惑星、コロニーに及んでいるか、
といった点にも興味が無い。
少なくとも彼が住んでいた居住コロニーには、幸運にも被害は及ばなかった為、
あくまでも他人事としてしか認識できなかったのだ。

そんな彼が何故ガーディアンズへと入隊したのかというと、これまた安直な理由で、
”適当に安全な任務だけこなしてるだけでも、そこそこの収入が得られるから”といった
ガーディアンズ総督が聞くと頭を抱えそうな理由である。
・・・もっとも、今のガーディアンズには、程度は違えど、そういった類の輩は多い。
他にも、
”民間では使用禁止とされている、各種フォトンを使用した兵器での実践が経験できる”
といった武器マニアもいるし、
”ガーディアンズ特権により、各種惑星を好きなように行き来できる”
・・・などと、このように様々な目的を持った者が大挙してガーディアンズへと入隊しているのだ。

後は、何の酔狂か、己の修練を目的として、ひたすらにフォトンアーツの技術を磨く者。
そしてこれがまた多い。最近入隊した者は、大半はこの部類でもある。

―ガーディアンズ本部―

「・・・デルタさん、また遅刻ですか?いい加減にしてくださいね」

オペレーターの女から小言を言われる。こっちだってなるべくは遅刻したいわけじゃないんだが、
どうにも(内容は覚えていないのだが)夢を見た日は、寝覚めが悪いのだ。
つい先日も新人訓練用のミッション(確か侵食された植物の調査だったか)でも
大遅刻をかまし、ビーストの女教官に大目玉を食らったところだ。
そもそも、現在の大幅増員により、ガーディアンズの人事もゴタゴタしており、
とっくにパルムでの実戦を終えたはずの彼に、新人訓練ときたものだ。
特に何か事件が起こるわけでもなく、普通に調査をして終わる、本当に退屈極まりないものだった。

「すいません・・・以後気をつけます!」

酷く冷たい感じで、オペレーターは事務手続きを行う。原因は自分なので仕方ないのだが。
「どうぞ、本日もパルムの原生生物駆逐ミッションですね?」
        
                                              続く

23 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:54:47.72 ID:YM27VcKe
54 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/06(月) 23:38:57.01 ID:mq+KY8Cm
”原生生物駆逐”
〜惑星パルムのSEED汚染区域で、ガーディアンズの理念に基づき、
現地の環境・生態系を極力保護しつつ、汚染された生物を駆逐せよ〜

これが、新人ガーディアンズである、デルタへと与えられた本日の指令である。
与えられた、というよりは、彼が選択しているのではあるが。
ミッションランクは低く、余程の事が無ければ生命の危険に晒される事は無い。
実のところ、デルタにとってはこのミッションは赤子の手を捻るような物で、
彼の実力からすれば、さらに上位ランクのミッションもこなせるのだが、
あまりやる気の無いデルタは、常に楽で、安全に稼げるミッションばかり受けている。
これがオペレータの女の不信感を煽っている原因でもあるが、それに彼は気づいていない。

「星霊の導きがありますように」

いつもの、お決まりの社交辞令だ。彼は、この言葉が好きになれなかった。
・・・理由は自身にも分からない。ただ、生理的に受け付け難いのである。

パルム行きのゲートへと向かう。多少の遅れはあったが、ここまではいつも通り。
そう、いつも通りの毎日だ。
世界の情勢なんぞ知ったこっちゃぁない。世界の平和なんて考えた事も無い。
ただ、生きていく為、それだけの為に、今日も俺はSEEDを駆逐するんだ。
被害者には気の毒だが、どうも俺には、今のこの世の中の仕組みの方が合っているらしい。

デルタ・デルニアス 性別:男 種族:ビースト 職業:フォース

・・・この物語は、どこにでもいる、ごく普通の(職業選択が多少珍しいが)ビーストの男の、
決して世界を揺るがす事も無い、大きな事件に関わる事も無い・・・
そんな、小さな物語。そして、彼の物語は、これより向かう惑星パルムの草原より始まる。

24 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:55:19.71 ID:YM27VcKe
69 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/09(木) 00:05:59.16 ID:dtJQnPyA
太陽と星霊の輝きに背いて

第二話「ヤクソク」

ガーディアンズという組織の中で、ごく最近、使われだした非公式の単語がある。それは”野良”と”固定”という単語だ。
簡単に説明すると、野良、というのは決まった仲間を持たず、その都度指令に応じて
パートナーを変えていく者。そして、固定というのは、いわゆる組織の中のさらに小さな組織、
つまり、仲間ということだ。

この二つの単語は誰が使い出したのだろう?
ニュアンス的に・・・なんとなく意味は分かる。
とにかく、一匹狼みたいなイメージで、いつもその辺りを自由にブラブラしてるっていうイメージがあるから?

私が初めてカードを交換したあの人は、今ではもっともっと上位ランクの、
私の実力とはほど遠いミッションを遂行中だ。
また組みましょうって、言ってくれたのに。
それ以来、一向に連絡が無い。勿論私からも連絡したけど、返事は無かった。
実力不足な私が足手まといになるから・・・かもしれない。ううん、きっとそうなんだろう。

その次にカードを交換した、キャストのあの子は、
その時一緒に交換したニューマンの男の人といつも一緒のようだ。

あの時、3人で、私も一緒に交換したのに。
いつもいつも、二人は一緒だ。私もいたのに、あれから二人はいつも一緒だ。
私のどこがいけないんだろう?私がニューマンでハンターだから?
役立たずだから?そう?そうなんだ。やっぱり。口では気にしない、みたいな事言って、
結局二人で私を笑っているんだ。そうだ、皆・・・そうなんだ。


・・・やめよう、馬鹿馬鹿しい。こんな風に一人で悪い方悪い方へと考え込むのは自分の悪い癖だ。
今はそう・・・目の前にいる獲物を狩らなければ。
そういえば、今日はもう一人、同じく”野良”の男が合流予定のはずだった。
どこで何をしているんだろう?まさか、やっぱり私の職業を知って投げ出した・・・?
そうか、やっぱりそうなんだ。


そこで・・・彼女は意識を現実に、真正面に向けた。
・・・目の前には、片腕が削ぎ落とされたヴァーラが、血を流しながら自らに迫っている。
セイバーを構える。迫るヴァーラの爪を弾き、そのまま胴体に向けて切り返す。
”グゲッ”と、曇った声を上げてヴァーラは激痛に怯む。その隙を突いて、ヴァーラの眼球へと
フォトンの刃の先端を向け、そのまま一気に体重を乗せて、前に押し込む。

最初の、意外と硬い眼球のわずかな抵抗の後、それは一気に内部へと、ずるり、と進入し、
奇声を発しながらヴァーラは地に崩れ落ちた。
・・・そして、そういった死体が、彼女の周りには5体ほど転がっている。

このヴァーラ達は、侵食される前からも群れを成していたのだろう。ひょっとしたら家族だったのかもしれない。
多少小さい固体も合った。これはまだ子供だったのだろう。そんな光景を見て、清々しい気持ちになった。

25 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:55:42.07 ID:YM27VcKe
70 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/09(木) 00:07:28.71 ID:dtJQnPyA
「・・・どうにかしてるな、私・・・」

誰に言うわけでもなく呟いた。本当に、どうにかしていると自分でも思う。
手についた油っこいヴァーラの体液を、足元の草になすりつける。
早く帰ってシャワーを浴びたいな、と、そんなことを考えていると、耳に装着している通信機が、
ピッ、と機械音を鳴らした。

(音声受信・・・?これは・・・味方の識別?)

回線を開く。

「あー・・・、悪い、遅れた。えーと・・・俺、デルタ・デルニアス。今日のアンタのパートナー
なんだけどさ、もうほとんど終わったみたいだな?」

「こちら、レミリア・ケヤキです。周辺のエネミー反応は確認できません。
お察しの通り、今回のミッションは終了です。お疲れ様でした」
そう言うと、そのまま通信を切った。なにやら申し訳なさそうに謝罪していたようだけど、
今更そんな言葉を聞いたところで、遅刻は遅刻だから。
約束を守れない奴なんて、口も利きたくないし、顔も見たくない、同じ空気を吸うのすら耐えられない。

・・・今日はもう、何もせずに帰って熱いシャワーでも浴びよう。
そうだ。買っておいたセレブショコラがあったなぁ・・・ホットコルトバミルクに合いそう。
あれを食べて、嫌な事をスッキリ忘れて寝よう、寝よう・・・
そんな事を考えながら、ニューマンのハンターである、レミリアは、帰りのGフライヤーの
シートでウトウトと、浅い眠りについた。


・・・レミリア・ケヤキがすぅすぅと寝息を立てているその後ろの席で、非常に気まずい顔をした
デルタがシートに座っていた。
(はー、さすがにマズったか・・・これはさすがに評価に響くよなぁ)
遅刻した上に、何する事もなく、そのまま帰路につくのだ。
その上、本日のパートナー(予定)であった、このニューマンの女は完全に聞く耳持たずだし、
兎にも角にも気まずいったらありゃしない。

本日のデルタ・デルニアスのミッション評価・・・C
よって報酬は一切無し。
自業自得といえばそれまでではあるが、彼にとっては、ミッションの評価以上に散々な一日であった。

26 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:57:03.18 ID:YM27VcKe
71 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/09(木) 00:09:40.57 ID:dtJQnPyA
「あ〜その・・・なんっつーか。今日は悪かったな、と」
「・・・別に、もう気にしてないから。あ、店員さん?コルトバジュースおかわりくださーい。
「あ、それと・・・ここニューデイズのケーキとか置いてあります?え?あ、一人分でいいですから」

パルムのカフェ。丸テーブルに座り、申し訳なさそうなデルタの正面に、レミリアが座っていた。
彼女の前には、ケーキやらパフェやらの平らげられた皿が並べられており、
正直、見ている方が胸焼けがしそうな食べっぷりだ。
(なんて女だ・・・誘うんじゃなかった・・・)
チラリ、とテーブル隅に置かれた伝票を見る。当然といえば当然だが、裏返しに置かれているので総額は分からない。
が、彼のメセタカードからごっそりとメセタを奪っていくのは間違いないだろう。
遅刻の詫びのつもりで、彼女をカフェに誘ったのはデルタである。
大体、女ってのは甘いものでも奢ってやれば少しは機嫌直すだろ、という安直な発想を持つ自分の愚かさを呪った。
「は〜スッキリした!うん、やっぱり奢りで飲み食いするのは最高ね!」
「どーも、そりゃ良かったね」
「・・・なーに?どうしたの?あ、ひょっとして怒ってる?遅刻したのは自分なのにね〜?」
「・・・う・・・」
確かに否定は出来ない。悪いのは自分だ。
「でも・・・やっぱりこれだけじゃ、腹の虫は収まらないなぁ」
(まだ喰うのかよ・・・太るぞ)

レミリアは、大げさにうーんと悩む仕草をする。10秒後。彼女出した要求はとんでもない物だった。
「そうだ。こうしましょう!パートナーカードを交換しない?・・・あ、ちがう。交換”しなさい”!
勿論あなたには拒否権は無いわ。それに、次にミッションを受けるときは、必ず私を誘う事、
これでチャラにしてあげる」
「・・・は?」
「何?聞こえなかったの?ビーストの耳は節穴なワケ?」
「あ、いや。そうじゃなくってだな・・・」
否応無しに、ぴろーん、と間抜けな音と共に、ガーディアンズ用の小型通信端末に、カード受信のアイコンが表示された。
「ほら、あなたのも早く頂戴」
「え、いや・・・その俺はその、なんだ・・・」
「頂戴!」
「あっ、こらお前!何するんだ!」

レミリアは、しどろもどろなデルタの端末を、半ば強引に彼の手から奪い取ると、
素早い手つきで、カード送信操作を行い、そして同時に彼女の端末で受信を完了させた。
「あきらめなさ〜い。もうカードはお互い交換済みよ?消去したらタダじゃおかないからね?」

この行動には、さすがに怒りを通り越して唖然とするしかなかった。
「・・・ったく、しょーがねぇな・・・分かったよ。それで気が済むのなら、次のミッションは
誘ってやる。これでチャラなんだな?」

「物分りがいいじゃない。助かるわ。さすがビーストね」
そう言いながら、レミリアはデルタの端末を彼に差し出す。
「そりゃ、どーも」

デルタがその端末に手を伸ばし、指先が触れた瞬間。レミリアは俯きながら言った。
前髪に隠れて、表情は見えなかった。
「・・・約束・・・だからね」
「・・・え?」

その一言は、とても冷たく、そして…重かった。

デルタも、そしてレミリア自身もまだ知らない。この約束こそが、決して破ってはならない、
守り続けなければならない、二人の運命を大きく左右することになる、
最初の”約束”であることに。



                                                   続く

27 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:57:40.93 ID:YM27VcKe
81 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/11(土) 22:31:58.39 ID:0KUgdIXG
太陽と星霊の輝きに背いて

第三話「二人と、一人」

夢を見ていた。
そこは、とてもとても寒くて暗くて。そう、死んだ方がマシだ、というぐらいに。
でも、死ねない。死ぬ事も、いや、そもそも生きている事すらも許されていない。
何かが…そう、例えていうなら”深淵の闇”とも表現できる、ドス黒い闇が、全てを覆っている。
助けて欲しい。助けて。もう、ここは嫌だ。
だが、全ての希望は立ち消えていない。天を仰げば、わずかに小さな光が見える。
あの光が掴めれば、掴む事ができれば、きっと自分は救われるのだろう。
だから、手を伸ばす。決して届く事の無い光へ。


「・・・様?・・・デルタ様・・・?」
「・・・ん・・・あぁ、もう朝か・・・」
「大丈夫ですか?またうなされてるみたいでしたが・・・」
「ああ、大丈夫・・・大丈夫だ・・・」
上半身を起こすと、ひどく寝汗をかいているのに気づいた。口の中はカラカラに乾いている。
そして・・・どうやら夢を見ながら泣いていたようだ。
最近、特に夢を見る周期が短くなっているような気がする。

心配そうな顔をしている、彼のパートナーマシナリー、GH440・コトリの頭を軽く撫でてやる。
(どうでもいい事だが、デルタの趣味により、室内ではコトリは帽子を取るよう命令されている)

「一度、お医者さんにでも見て貰った方がいいんじゃないですか?健康管理には睡眠も大事な要素ですよ」
「ガーディアンが変な夢を見るせいで眠れません、だなんて言えるか」
「そうですが・・・でも・・・」
「それよりか飯だ。なんでもいいから作ってくれよ。腹が減って仕方ない」
「う・・・ご飯・・・ですか?」
コトリは、合成に失敗した時のような、申し訳なさそうな顔をした。

「ん?どうしたんだ?」
「あ、あのですね・・・実はその、ワタシのメセタカードの残額がその・・・底をついちゃいまして、
お買い物に行けなくて」
「あ、あぁ、そうか・・・」

頭を抱えた。・・・コトリに渡している生活費のメセタカードの残高が少ないのは分かっていたが、
先日のあの大喰らい女のせいで、補充は後回しにしていたのだ。
そして、デルタが所持しているカード残高は、残り108メセタである。

「仕方ない・・・またパルムにでも行くか。・・・コトリ、フリーミッションはまだ残ってるか?」
「確認します。しばしお待ちを」

コトリは部屋に設置された端末の操作を始めた。現在、受領可能なフリーミッションの問い合わせを行っているようだ。

「パルムミッションですよね・・・2日前くらいでないと無いと思いますが・・・あ!ラッキーですね、空きが一つありますよ!
今から受け付けしても大丈夫みたいです。今日こそは遅刻しないよう、すぐに出かけるのをオススメします」
「よし、よくやった。それじゃ、面倒くさいが・・・行くとするか。登録頼む」
「あの〜今日はワタシも同行してよろしいでしょうか?久々に外を歩きたい気分なのです」
「ん?・・・ああ、いいぜ」
「ありがとうございます。それでは、デルタ様とワタシの二名で、登録しますね」
「ああ、他に取られる前にちゃっちゃとやってくれ」
「はい、了解です。光の速さで入力しますね!」

28 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:58:06.45 ID:YM27VcKe
82 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/11(土) 22:34:42.84 ID:0KUgdIXG
・・・端末はコトリの背丈からすると、少々高い位置にある。その為、彼女は爪先立ちで、手を伸ばして端末に向かっている。
非常に打ち難そうな格好で、ぷるぷると震えながらキーを叩いているのだ。モニタに至っては、見えているのかどうかすら怪しい。
そんなコトリの後姿を見て、デルタはニヤニヤと、これまた他人が見たら変質者といわんばかりの笑みを浮かべている。
大金と手間を掛けただけはあるな、とデルタは満足した。
彼が貧乏日暮生活を送っているのは、コトリを人型にする為に、生活資金の大半をつぎ込んだのも原因の一つである。
なお、このようなパートナーマシナリー愛好家は、彼の他にも多数いるらしい。

とてもじゃないが光の速さとは言えない、コトリの指の動きを目で追いつつ、デルタは一つ、先日の約束を思い出した。
「あ・・・すまん、コトリ。後もう一人追加にしてくれ。枠は3人な」




(あの人は・・・もうあんなレベルなんだ)
(あ、またあの二人一緒だ・・・へぇ、今は仲良くニューデイズね・・・)
(この人は最近見なくなったな・・・殉職したのかな・・・それとも辞めたんだろうか?)

レミリアはベッドに仰向けに転がって、ガーディアンズの携帯端末を操作していた。
彼女が見ている画面には、彼女がパートナーカードを交換したガーディアンのレベル、
そして現在地等が詳細に表示されている。あくまで、今現在、ガーディアンズとして活動している者の表示のみであり、
休暇、いわゆるオフの状況までは知ることが出来ないが。

彼女が見つめているのは、それぞれのレベルの数値だった。
このレベルというのはあくまでも、システムが身体能力・戦闘経験数を元にはじきだした数値で、
実際の戦闘能力としては、本人の戦闘センスや、使用するフォトン装備の威力・属性に大きく左右される。

とはいえ、このデータ化された数値こそが、個人の能力を測る上では非常に重要視されているのが現状であり、
事実、余程の個人差が無い限りは同じレベルの数値であれば、想定される基礎戦闘能力は大差が無く、
組織としても充分に信頼度の高い数値である。
また、このレベルの数値によって、発行されるミッションが制限されており、これは未熟なガーディアンを
危険な任務に向かわせない、という政策でもある。

そして、彼女にとっては、このレベルという数値こそが、忌々しい存在なのだ。
一般的に身体能力で劣るニューマンの女性のハンター場合、同じレベルだとしても、それは他種族のハンターと
比べると、能力的に大きな差が開いてしまう。
種族特性上、フォースが向いているのは彼女自身も良く理解していることだが、それでも彼女はハンターの道を歩んでいる。

だが、現実は甘くは無い。やはり、ニューマンのハンターである事から敬遠されてしまう事が多々あり、
(実際問題、彼女の思い込みによる部分もあるかもしれないが)それにより彼女はコンプレックスを抱く事になった。
そして、レベル、つまり実力が数値で表されるこの組織では、レベル差が開いてしまうと、実力不足、という事で
上位のミッションを遂行するにあたっては、敬遠されがちなのである。


(そういえば、アイツ・・・ええと、すっぽかし男。あれから一向に連絡来ないな・・・)

デルタ・デルニアスの詳細を開く。カードを交換した時から、一切レベルは上昇していない。何をしているのかは
分からないが、レベルが上がっていないという事は、あれ以降、ミッションを受領していないのかもしれない。
ということは、一応、約束は破っていない可能性はある。

なんとなく、更新ボタンを連打する。すると、それまでミッション未受領状態だった彼の情報が、
突如、”パルムミッション受領中”と更新された。偶然とは恐ろしいものである。

・・・携帯端末を持つ手が震える。どうやら、彼は自分を誘わずに、パルムへ行くつもりなのだ。

(やっぱり・・・アイツもいい加減な嘘つき野朗だったんだ!結局はその場しのぎの適当な約束しただけなんだ!まただ!また裏切られた!)

ぎゅっと携帯を握り締める。壁に叩きつけてやろうかと思ったが、支給された備品だ。さすがに壊してはまずい。
悔しくて、枕を掴み、思い切り、何度も何度も壁や、ベッドに叩き付けた。
(もう嫌だ!もう誰も信じない!みんな嘘つきだ!みんな嫌いだ・・・!)

29 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:58:28.59 ID:YM27VcKe
83 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/11(土) 22:35:59.82 ID:0KUgdIXG
悔し涙を流しながら、枕に八つ当たりしていると、
”ピピピピ”と携帯端末の電子音が部屋に鳴り響いた。それは、音声通信の着信音だった。
ゆっくりと、発信者の名前を確認する。

―デルタ・デルニアスと書かれている。そして、レミリア自ら入力した「遅刻野朗」というコメントも見える。
震える指で、受信ボタンを押し、回線を開いた。

「・・・もしもし?」
「あー、俺だ。俺。この前の約束、覚えてるか?・・・今からパルム行くんだが、一緒にどうだ?」
「今から・・・?随分急なのね」
「行くのか、行かないのか?早く決めてくれ。こっちにも色々と都合があるんだからな」
「ふーん、そうなんだ。それじゃ・・・そうね、今少し、忙しいんだけどせっかくのお誘いだし、同行させてもらうとするわ」
「OK、分かった。それじゃ本部で集合な」
「ええ、今度は遅刻しないでね」
「へいへい、それじゃ、後でな」

・・・通信終了。

次の瞬間、彼女は光の速さでシャワーを浴び、お気に入りの服に着替え、そして部屋を飛び出したのだった。
それはもう、満面の笑みで。先ほどまで泣きじゃくっていたとは思えない程に・・・。


―ガーディアンズ本部―

「・・・デルタ様、この女は誰ですか?」

誰って言われてもな…、別に誰だっていいじゃないか。男なら問題無かったのか?

「・・・ちょっとデルタ、何よこの子?聞いてなかったわよ」

そりゃ、そうだ。話してなかったらな。

「なんですかあなたは?デルタ様に取り入ろうとしてますね?何が目的なんですか?お金ですか?デルタ様は貧乏です!」
「なぁに?パシリのクセして偉そうに。第一、あたしがわざわざ手伝いに来てあげったってのに、その態度は何よ?」

コトリよ、金が無いってのは、嘘ではないが、ほら、周りに沢山人がいるだろう?
レミリアよ、わざわざ誘ってやったのは、こっちなんだが。

「え、ええと・・・珍しいですね。今日は二人と・・・パートナーマシナリー同行ですね」

今にも爆発しそうな、笑いを堪えたオペレーターの女、そして周囲のガーディアンの者達が暖かい視線を俺に送る。
「おい・・・お前等、さっさと行くぞ。次の便が出ちまうぞ」
後ろでぎゃあぎゃあ言い合う二人と、周囲の視線から逃げるようにデルタは外へと向かった。

30 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:58:47.22 ID:YM27VcKe
84 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/11(土) 22:37:28.57 ID:0KUgdIXG
パルム行きへのゲートへの道中。ふと後ろを振り向くと、当たり前だが、レミリアとコトリの二人が
自分の後ろをついて歩いてきている。いまだに口喧嘩は続いているようだ。

(そういえば、コトリ以外の、他人とパーティーを組むのは、あの時以来、か・・・)

ふいに、昔の事が思い出される。といっても、数年単位の過去の話ではなく、数ヶ月前になるが。
デルタも、ガーディアンズ入隊当初は、今のような無気力な男ではなく、多少なりとも向上心はあった。
それは、レベルを上げて、上位ミッションを遂行する、というガーディアンとしては当たり前の事である。
やはり上位ミッションであればあるほど、報酬も多い。
あくまで、楽で安全な範囲でならば、そこそこに向上意欲が沸くと言う物だ。
だが、それは仲間がいたから、である。背中を任せられる、信頼できる仲間が。


あの日の出来事が、自分をより後ろ向きな性格に変えてしまったのだと、彼は思っている。
それまで興味が無かったコトリの育成も、それから餌を与えはじめ、今の人型にしたのだ。
アイテム合成から、家事全般をこなしてくれる、便利な存在だが、それ以上に・・・寂しさを紛らわせてくれる。

(・・・ったく、ヤメだヤメ。嫌な事思い出しても何にもいい事ないからな)
そこまでで、デルタは考えるのをやめた。昔の嫌な事は、忘れるに限る、それが今の彼の信条なのだから。


パルム行きの便は、後数分で出発する。3人はどうにか空いている席を確保でき、それぞれ座った。
デルタは、窓際に座る事が出来た。横に座ったレミリアがぶーぶー文句を言っているが、気にしない事にした。
どうせパルムまでは一瞬なのだから。

今はただ、今日の飯の事だけを考えていよう、ああ・・・腹が減った。早いところ終わらせてしまおう。
そんな事をぼんやり考えながら、窓の外に遥か広がる宇宙を眺めた。

                
                                                           続く

31 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 22:59:13.02 ID:YM27VcKe
89 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/16(木) 00:36:46.87 ID:xO9Lz9GS
太陽と星霊の輝きに背いて

第四話「耳」


「まあ、ザコですね」
最後の一体の敵を仕留めたコトリが、ふふん、と得意げにレミリアを見ながら言った。
「・・・ちょっと、今のは私が止めを刺したんだから、ねぇ、デルタ!?」
「いいえ、今のはワタシのショットガンですよ、デルタ様、そうでしょう?」

こいつらは…何を張り合っているんだ・・・と。
半ば呆れながら、後方で援護をしていたデルタは、テクニック、”レスタ”がセットしてある片手杖を取り出した。
そろそろ回復のタイミングだ、と判断したのである。
普段はワンテンポ遅れて、すぐに主人を見失うほどの役立たずっぷりを見せるコトリだが、何故か今日は
レミリアと共に敵陣に突っ込んでいる。いつもこれくらい積極的だと助かるのだが。

「お前ら、いいからこっちこい。レスタするぞ」
「あ、はい、デルタ様!ありがとうございます!」
「私は別にまだまだいけるわよ!・・・でもまぁ、折角だしお願いしようかしらね」
(ったく・・・今日はヤケにレスタが多いぜ・・・)
二人がレスタの射程範囲に入ったところで、手にした杖を握りしめ、精神を集中させる。
杖先端のフォトン光から、代謝を部分的に活性化し、自然治癒を促進する光が放出され、二人の体の傷が癒えてゆく。
なお、パートナーマシナリーであるコトリの場合は、一部有機パーツの再生のみが可能であり、
ボディフレームや各種センサー類等、機械部品で構成されている部分が破壊された場合は交換するしかない。
それ故、普段は後ろに控えて極力被弾を避けるようにしている・・・のかもしれない。

「うーん、やっぱりモノメイトと違ってこっちは気楽でいいわね!お金も掛からないし太らないし!」
「・・・おい、俺は金が掛かってるぞ。杖のチャージ代がな」
「あら、それくらい大した事じゃないでしょ?なんせ、パシリを人型にまでしちゃうお金持ちさんなんだし」
「う、それはだな・・・」
「まーさか、こんな役立たずに財産投げ打っちゃうような事はしてないんでしょ〜?」
「役立たずとはなんですか!少なくともあなたよりは役に立ってます!」

・・・やれやれと、デルタはため息をついた。
なんでこう、女ってのはぎゃあぎゃあ口五月蝿いのかね。片方は女といっていい物かは微妙なんだが。
デルタは、レーダーを索敵モードに切り替えた。
周囲に特に目立つような反応は無い。どうやら、この付近の汚染生物は全て駆逐できたようだ。
・・・やっと飯にありつける。気苦労は倍だが、この分だとSランクの報酬が見込めるだろう。

「おい、お前ら。とりあえずここでミッションは終わりだぜ。とっとと引き返すぞ」
「はい、分かりました。ご飯ですね!」
嬉しそうな顔をするコトリ。しかし、それに反してレミリアは少々ムッとしている。
「・・・ちょっと、デルタ。折角3人揃ってるんだしさ、ここで引き返しちゃうわけ?この先の継続ミッションは行かないの?」
やはりそう来たか、とデルタは思った。
確かに、この先の中継基地へ向かえば、さらに継続して草原の奥へと進むミッションが受領できる。そして、報酬も悪くない。
だが、しかし・・・

「ん〜・・・なんつーか、ほら、今日は気分が乗らないっつーか・・・なぁ」
「何よ?気分って。お金、欲しいんでしょう?だったら行きましょうよ。大丈夫だって。ねぇ?」
レミリアは、同意を促すようにコトリを見た。先程までの不仲はどこへ行ったのだろうか。
しかし、コトリはコトリで、見つめられては返答に困り、オロオロとするばかりだ。

「あー・・・そのなんだ。悪い。俺は遠慮しとくわ。行くならさ、一人で行ってくれよ。
中継地点からでもミッション受領は可能だろ?それにさ、どこか遂行中のパーティーに途中から参加もできるしな」
デルタからすると、それは決して一片の悪意も無く、現状、彼女に用意された最も合理的な選択肢だと判断した上での
発言だった。だがしかし、それは触れてはならない彼女の逆鱗に触れてしまったようだ。

32 :名無しオンライン:2006/12/04(月) 23:17:56.22 ID:EyY3VrgC
関連スレ?
http://live19.2ch.net/test/read.cgi/ogame3/1161516493/

33 :太陽と星霊の中の人:2006/12/04(月) 23:30:55.68 ID:Vs8qSN8Y
落ちてたと思ったら復活とは・・・
しかもやけにレス多いと思ったらコピペしてたのか・・・


    ハ、 ∧ ハ           /\   /\   /\
        ,{! ヾ } / !i ヽ    ___/\/   \/   \/   \/ |_
.      |ソハ   !}   jレi   \
        } !/¨  〃  '{   /
       ト{´{ .ハ} r'"´} !{   \  >>1! おまえの命がけの行動ッ!
      FY'弍{ }' 斥ァ`}ハ   /
      ヾ{:i  /ノ〉` !rソ    ̄|/\/\   /\   /\
.        ヽ /'f=ヘ  ハト、         _/\/   \/   \/
       ,ノ´f\='/ノ!ヽ\._      \
    /ノ !|`ヽ三イ  ヽノノ `'ー-、._ /  ぼくは
  / r'/   | /::|,二ニ‐'´イ -‐''"  /´{ \  敬意を表するッ!
  {  V   ヽ.V/,. -‐''"´ i   /  |/
  ヽ {    r‐、___     i  /     ∩  ̄| /\/\   /\ /\
   } .ゝ二=、ヒ_ソ‐-、   i__,. '| r‐、  U          \/
.   |  〉 ,. -',二、ヽ. `ニ二i___ |:| l|   |
    |'}:} ,/|毒|\丶   i ,::'| 'ー'  {
    |ノノ  |,ノ:::::|ト、 \ヽ ! i }`i´  r|
    |_>'ィ毒::::ノ  丶 ハ し-' | !  | |
 ┌≦:::::::::::::/      lハ     | ) U
 /ィf冬::::::イ |::.. j:    }lハ.   |∩  '゙}


リアル引越しでゴタゴタしているので、落ち着いたらまた続きうpしまつ。
どうやら、俺にはまだ続きを書く場所があったようだ。こんなに嬉しい事は無い・・・


34 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 00:18:07.63 ID:hnzA+9xT
うぉ!?
何気に復活している。
>>1乙です。

デルタの話しの続きは無いのだろうか………確か六話で止まってたような気がする。
結構好きなんだけどな、この話。

35 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 08:56:39.00 ID:8Vl4UC5v
>>31の続き
90 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/16(木) 00:38:30.35 ID:xO9Lz9GS
「何よ・・・!そんなに私と行くのが嫌なわけ!?」
「はぁ?何言ってんだよ。別にお前と行くのが嫌ってわけじゃなくてだな・・・」
「正直に言いなさいよ!私が役立たずだから…なんでしょ!?」

デルタは思った。おいおい、何を言い出すんだこの女は・・・と。
そもそもお前がニューマンのハンターで役立たずってんなら、俺も似たようなもんだろう、と。

「・・・うっせーなぁ。とにかくな、俺は今日は腹も減ってるし、気分が乗らないんだ。別にお前の事がどうこう
ってわけじゃねーよ。それにな・・・そんなに自分で自分が役立たずと思ってるなら、フォースにでも・・・」

ここまで勢い良く言って、”しまった”と、自分の迂闊な発言に後悔した。
”フォースにでも”、と言った瞬間、レミリアが、明らかにそれまでと違う反応を示したのだ。
キッと、自分を睨みつけ、今にも泣きそうな怒りの表情を浮かべている。
「・・・なんでそういう事言うわけ!?私の気持ち、何も知らないクセに!!」

そして、一瞬視界がぐらりと揺れて、遅れて鈍い衝撃が頬に走る。・・・どうやら平手打ちを貰ったようだ。
女性に平手打ちを貰ったのは生まれて初めてのデルタだったが、
(なんだ・・・ニューマンでも、結構、力あるじゃねーか・・・)
と、妙に冷静な思考をしている自分に驚いた。

・・・結局、中継基地には向かわず、3人はそのまま帰りのGフライヤーに搭乗し、ホルテスシティへと帰還した。
デルタとレミリアは終始無言。一切口を開こうとはしなかった。
コトリはそんな二人の嫌悪なムードの中、びくびくと震えているだけだった。

本日のデルタ・デルニアスのミッション評価・・・S
しかし、報酬がどうあれ、前回以上に最悪な一日だったのは、言うまでもないだろう。


先日、デルタとレミリアが二人で来たパルムのカフェ。
そこに、レミリアが一人で座っていた。
彼女は何も注文せず、ただテーブルにうつ伏せになって・・・そして泣いていた。

(どうしようどうしよう。何であんな事をしてしまったんだろう。
悪いのは私だ。彼には一切の非が無い。彼はただ、”気分が乗らないだけ”と言ったのに。
勝手に自分が変な思い込みをして・・・おまけに、ビンタまでしてしまった。
ああ、ごめんなさい。ごめんなさい。本当にごめんなさい。
ダメ、こんな所で一人で反省してもダメ。謝らなくちゃ。早く。彼に謝らなくちゃ。
・・・何て言えばいいんだろう。
ダメ。もう完全に変な女と思われてるし、きっとメールをしても、返事は返ってこないだろう。
・・・なんで。なんでいつもこうなんだ。いつも悪いのは私だ。折角誘ってくれたのに。私は・・・)

「どーしたの?女の子が一人で泣いちゃって」
・・・後ろから声を掛けられた。
「・・・?」
そこには、(レミリアに比べると)かなり背の高い、眼鏡をかけた、いかにも知的なお姉さん、といった雰囲気の
ヒューマンの女性が立っていた。

「お姉さん、この席座っていいかな?」
「・・・ひっく・・・どうぞ」
泣きじゃくったせいか、まともに口が開かない。しゃっくりが止まらない。
「あらあら、あなたみたいな可愛い子を泣かす悪い男もいるのね」
「うっ・・・うっ・・・ちがいます。・・・あたしがいけないんで・・・す」
口に出すと、再び後悔の念の波が押し寄せ、涙がぼろぼろと溢れてくる。
「どうやら、結構ワケありな感じね・・・どう?良かったらお姉さんに話てみない?ほら、人に喋ると結構気がまぎれるし、
私で良ければ相談してあげるから、ね?」

36 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 08:57:10.91 ID:8Vl4UC5v
91 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/16(木) 00:39:29.16 ID:xO9Lz9GS
・・・レミリアは、今までの経緯を、その初対面の女性に全て話した。
自分がガーディアンであり、そして今まで経験してきた辛い事を。そして、今回のデルタとの一件を。
女性は、時折相槌を打ってはいるが、終始彼女の言葉に耳を傾けていた。
「・・・と、いうわけなんです・・・」
「へぇ〜、それで、ここで泣いてたってワケ?」
「はい・・・本当、馬鹿ですよね、私・・・」
「どうかしら?本当に馬鹿なのは・・・どっちなのかしらね?」
ふふっ、と、女性は含み笑いをした。
「・・・どういう意味・・・ですか?」
「彼ってね、ほら、あれでやっぱり、すごく鈍感で鈍い男なのよ。それでいて結構繊細だし、複雑なのよ」
「え・・・?」
「黙っててゴメンね?・・・実は、私、デルタとちょっとした知り合いだったりするの」

・・・一通り話が進んだところで、何やら、困っているような、妙な顔つきをしたウェイターがグラスに注いだ水を持ってきた。
さすがに超時間座っており、何かしら注文しないと店側としても困るのだろう。
出て行け、もしくは何か注文しろ、という無言の合図みたいなものだろうか。

レミリアは、メニューに目を通しながら、女性の方を見た。・・・改めて見ると、凄い美人である。
サラサラのロングヘアに、美しく整った顔立ち。・・・そして何よりも胸が大きい。まさにモデル級の体型だ。
(自分の胸を見ると、まな板・・・という表現がピッタリなのが悲しい)
ニューマンの自分ですら、美人だと思えるこの女性だ。男が放っておかないだろうな、と思う。

そんな彼女の視線の意図を勘違いしたのか、その女性は少し苦笑いをしてこう言った。
「あ、私は別にいいの。ここの常連なんだけど、いつもお喋りばかりして何も注文した事ないのよ。
だから店員にすっごく嫌われてるのよ〜。ほら、見てよ。もうお水すら持ってきてくれないんだから。酷い話でしょう?」
言われて、レミリアは気づいた。店員が持ってきたグラスは一つだけだった。
客商売というのは大変なんだなぁと、しみじみ思った。

ストローから、ジュースをちゅ〜と吸いながら、ひゃっくりも落ち着いてきたレミリアは、女性に質問を投げかけた。

「その・・・デルタの知り合いって、どういう関係なんですか?・・・まさか付き合ってたり??」
「まっさか〜、そりゃ、見た目だけは、確かにちょっといい線いってるとは思うけどね〜」
「そうですか・・・あ、そういえば・・・お名前まだ聞いてませんでした」
「あ!そういえばそうね。これはうっかりだわ。失礼失礼」

37 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 08:57:32.27 ID:8Vl4UC5v
92 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/16(木) 00:40:56.06 ID:xO9Lz9GS
女性は鼻歌を口ずさみながら、懐から携帯端末を取り出した。それはガーディアンズ支給の端末だった。
「ふふ、驚いた?私もガーディアンなのよ」
慣れた手つきで、女性はカードをレミリアに送信した。合わせてレミリアも返信する。
「エレナ・ベルエール・・・さん?・・・っ!?」

びくっと、レミリアは震えた。端末に視線を集中したせいで気づかなかったのだが、
エレナはレミリアの背後に一瞬で回りこみ、いきなり彼女の髪の毛を撫でながら耳元で囁いた。
物音一つ、気配すら感じさせなかったのは、それだけ彼女が熟練のガーディアンであるという事なのだろう。

「もう・・・”さん”だなんて、他人行儀じゃないの。エレナでいいわよ・・・レミリアちゃん?」
「あ、あの・・・エレナ・・・さん?」
「可愛い・・・食べちゃいたいかも・・・?」
「・・・ひゃっ!?」

レミリアの耳に、何か生暖かい感触が。なんと、彼女がレミリアの耳を、はむっと口に咥えたのだ。
彼女の驚きの声に、店員と周囲の客が視線を寄せる。

「あっはは〜もう、本当、可愛い〜」
「あ、あの、エレナさん!」
「ふふ、ごめんごめん。あ、それじゃ私そろそろ行くから。あ、そうそう。
ここで私と会ったのはデルタには内緒ね?・・・ちょっと、彼とは色々あったから。約束ね、いい?」
「え?・・・内緒・・・ですか、あ、その・・・はい。約束します」

「いい子ね。じゃあまた会いましょう。大体いつもこの時間にここに遊びに来るから、それじゃまたね。
あ、そうそう、彼ね、細かい事気にしないタイプだから。あなたから連絡してあげてみて?あれで結構寂しがり屋なのよ。
・・・あなたと同じで、ね」

「私と・・・同じ・・・デルタが?」
「そう、そういう事。じゃっ、またねっ!」

エレナは、困惑するレミリアを残し、急ぎ足でその場を離れていった。
(デルタが・・・寂しがり屋、ね・・・)
レミリアは咥えられた耳をさすりながら、ぼんやりと、去り行く彼女の背をいつまでも見つめていた。



                                                      続く

38 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 09:17:21.56 ID:8Vl4UC5v
98 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/17(金) 21:08:59.02 ID:hUIctLPt
太陽と星霊の輝きに背いて

第五話「レミィ」


「朝ですよー」
・・・ゆさゆさ、と体が揺れている。

「デルタ様ー。朝ですよー。朝なんですよー」
・・・耳がぐいぐいと引っ張られている。正直、結構痛い。

「デルタ様ー。もうそろそろ起きないと脳細胞が死んじゃいますよー」
・・・頭部を何か鈍器で殴打されているような激痛が、何度も何度も繰り返される。
これは・・・正直、痛いどころのレベルじゃないぞ。

「デルタ様ー・・・もう・・・仕方ないなぁ。よし、こうなったら」
カチャ、と安全装置を解除する音が聞こえた。

「だーーー!分かった!起きる、起きるからっ!!」
「あ!やっと起きた!おはようございます。今日もいい星空ですよ!」

・・・今朝は変な夢も(多分)見なかったのだろう。寝つきは良かったと思う。目覚めは最悪だが。
それにしても、パートナーマシナリーには学習能力があって、それぞれ共通のOSと思考ロジックを備えているが、
主人の言動・生活スタイルに合わせて固体独特の成長を見せる・・・というのは聞いた話ではある。
この、主人にショットガンを向けて嬉しそうな顔をしているGH450は、どこで道を踏み外したのだろうか。
・・・と、朝から自らの教育を少し反省するデルタだった。

「今日はどうしますか?パルムのミッションが、今ならまだ空きがありますが」
「そうか・・・いや、まだ金はあるからな、今日は寝て過ごすぜ」
「はい、分かりました。それでは私は部屋の掃除をさせて頂きますので、お散歩にでも出かけてください」
「はぁ?俺は寝るって言ったんだぜ?第一、まだそんな散らかってないだろ」

自らの部屋を見渡す。空になった酒瓶や、ツマミの袋がごろごろとしていてる。ついでに6日分の下着が散乱している。
さらに言うと、定期購読している銃火器の雑誌や、ちょっと内容は言えない、コトリが見ると赤面するような雑誌類が
おおよそ半年分だろうか?それらが、積んでタワーになっていたり、それが崩れたりで、
多少床が見えないくらいだが、全然綺麗だとは思うが。

「デルタ様・・・あのですね、ワタシは年頃の女の子ですよ?そんな女の子をこんな汚いゴミ溜めに住ませてるなんて、
他のガーディアンの方々が知ったら大騒ぎですよ!追放ものです!
第一ですね、ワタシみたいな最先端のパートナーマシナリーがこんなところにいたら壊れちゃいます!
・・・そもそもですね、精密機器の扱いにおいて、埃というものがどれだけ・・・」

「あー、わかった。わかったよ。出かけるから、掃除終わったら連絡してくれよ」

・・・何が言いたいのか分からないが、まぁ、とりあえずは部屋が汚い、掃除するから出ていけって事なのだろう。
なんだか先日のレミリアとのミッション以来、妙に苛々しているようにも見える。
ここは大人しく従った方が無難だ、とデルタは判断した。

39 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 09:17:45.33 ID:8Vl4UC5v
99 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/17(金) 21:09:29.79 ID:hUIctLPt
(さーて、どこ行くかな・・・)

追い出された彼に、特に行くあてがあるハズも無く、彼は路頭に迷う事になった。
買い物をしようにも、生活費で手一杯の現状、そんな余裕があるはずもない。
とすると、やはりここはミッションでもこなして、金を稼ぐ・・・しか選択が思いつかない。

ガーディアンズは、”金稼ぎばかりの事しか考えていない集団だ”、とグラールチャンネルだったか、
ともかく暇つぶしにしか見ないようなニュース番組のインタビューで政治家が叩いていたが、
実際には、”金稼ぎしかする事が無い”、というのが真実なのかもしれない。

超極秘ミッション(例えば教団の巫女の護衛)などは、ごく一部の選ばれた者が頑張ってるわけで、
平社員な大多数のガーディアンは、沸いたSEEDを排除して、その報酬を貰い生活をする。
そんな日常の繰り返しなのだ。
他の楽しみがあるかといえば、特に思い浮かばない。
せいぜい、星霊の導きによって巡り合った女の子とのデートぐらいだろうか?・・・その相手もいないわけだが。

(仕方無いな・・・パルムのミッションでもやるか)

重い足を引きずり、デルタはそのままガーディアンズ本部へと向かった。
・・・最近、パルムの低ランクミッションは不人気・・・というよりも、受領する人間が減ってきたようだ。
皆、レベルが上がり、さらに上位のミッションを受けるようになっているから・・・らしい。
そんなわけで、デルタにしては駆け込みでのミッション受領が可能となり、ありがたい話である。

「あら?今日はお一人なんですね?この前の・・・レミリアさんは一緒じゃないんですか?」
「はぁ・・・今日は一人で」
「そうですか、分かりました」

・・・それにしても、この間は本当に参った。確かに、自分の発言にも非があるが、だとしてもあの態度には驚かされた。
そういえば、彼女は今何をしているのだろう、と、携帯端末からレミリアの情報を取得する。
マイルーム、と表示されている。部屋でゴロゴロしているんだろうか。

(あー・・・ったく、なんかなぁ。後味が悪いんだよなぁ・・・)

誰かに責められたわけでもないが、デルタは自分の発言を悔いていた。
そう、例えば、自分が今、ビーストという力に秀でた種族なのに、あえてフォースを選んでいるのには
それなりの理由があるからだ。そして、彼女にも何か理由があって、ハンターという職業を選んでいるのかもしれない。
自らも不利な職業を選んでいるからこそ、あの発言の重さというのは良く分かっている。

(アイツ・・・まだ怒ってるかな・・・)

メールを送るか?・・・いやでも、ひょっとしたら返事が来ないかもしれない。自分が傷つけてしまったから。
あの時の、彼女の顔が鮮明に浮かんでくる。
そうだ、いつも自分は、相手の気持ちを考える事が出来ない。自分の事しか考えていない馬鹿な男だ。
いや、考える事が出来ないんじゃない、考えようとしないだけなんだ。
相手の気持ちを考えるのは、とても辛くて面倒だから。だからこそ・・・だからこそ、分かっている癖して、
何もしない自分は、駄目な男なのだ。

40 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 09:18:13.14 ID:8Vl4UC5v
100 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/17(金) 21:12:52.68 ID:hUIctLPt
『おはよう。レミリアです。ええと、この前はゴメン。
ちょっとイライラしてて、あんな酷い事しちゃって。
ほんっとーにゴメンなさい!!
えっと、それでもしよかったら今から一緒にミッション行かない?
お詫びってわけでもないんだけど、今日はあたしが報酬でおごってあげるから』

・・・携帯端末には、長文メールがだらだらと打ち込まれており、
後は送信ボタンを押すだけ・・・なのだが、そこで踏ん切りがつかないレミリアが、
自室のベッドの上で悶々としていた。

(そうよ・・・ここでちゃんと謝らなきゃ・・・あたし、がんばれ!物事は良い方向に考えなきゃ。
そう、ポジティブにポジティブに・・・エレナさんも言ってたじゃない、誘ってあげると喜ぶって)

「レミリア様・・・もう一時間もそうしてますよ?なんなら私がボタンを押しましょうか?)
呆れた顔で、彼女の、まだ初期段階である、球体のパートナーマシナリー「コロ」が、
覚悟の足りない主人を後ろから眺めている。

「コロ、黙ってなさい!メールくらい、自分で送れるわよ!馬鹿にしないで!」
「はぁ・・・じゃあさっさと送りましょうよ・・・もう一時間経過してますよ?」
「う・・・分かってるわよ・・・そうよ、メールを送るくらい簡単・・・簡単なんだから・・・」

指に力を込める、そう、この指をあと1ミリでも押し込めばいい話だ。簡単な事である。
が、しかし・・・彼女の指はぴくりとも動かないのである。そして、そんな事を繰り返しつつ、一時間が経過したのだ。
「あーー!もう、イライラするわね!そうよ!このメールの内容に問題があるのよ!
悪いのは向こうなんだから、下手に出るのはおかしいわ!!」

何か根本的に間違っているような気もするが、レミリアは状況を打開すべく、文章を取り消し、新しい内容に更新した。
「どれどれ、今度はどんな内容なんですか?」

と、コロはふわふわと浮かびながら、後ろから端末を覗いた。そこにはこう書かれていた。
『この間の事なんだけどさ、あなたが悪いんだからね!私は謝らないから!
だから、許して欲しかったら、またあたしをパーティーに誘いなさい!
これでチャラにしてあげる。いい?絶対だからね!』

(駄目だこの女・・・早くどうにかしないと・・・)
・・・と、コロは思った。


一方、デルタは受け付けの前で、端末を見て唸っていた。
「デルタさん?どうしますか?レミリアさん、誘うなら早くメール送ってください」
オペレーターの女が、うんざりした顔で彼を急かす。
「あー・・・その、ちょっと待ってください。今メール打ってるので」
「さっきからそればっかりじゃないですか。誘うだけなのになんでそんなに時間かかるんです?」
「その、自分文字打つの遅いもんで・・・新しい機械は使い慣れないんですよ、ビーストは馬鹿なんですよ、ハハハ・・・」

たまたま近くにいた、新人訓練ミッションの教官が、デルタをキッと睨んだのに彼は気づかなかった。
この場合、気づかない方が幸せなのかもしれないが。

・・・彼の携帯端末には、このような文章が入力されていた。
『デルタだ。えーと、この間はすまなかった。お前の気持ち考えずに、適当な事言って。
俺だって、ビーストなのにフォースやってるから、どれだけ辛いかは分かるし、
だからこの前言った事は悪かったと思ってる。もしよかったら、また一緒にミッションやらないか』
改めて、自らが入力した文章を見直すと、鳥肌が立ちそうである。

(嘘くせぇ・・・っていうか、なんだこの恥ずかしいメールは・・・寒気がする。
あーー、くそ、大体なんで俺が謝らなけりゃいけねーんだよ。あいつが変な事言い出さなけりゃそもそも・・・)
そうして、彼は素早く、実に使い慣れた手つきで文章を更新した。

41 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 09:18:36.90 ID:8Vl4UC5v
101 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/17(金) 21:13:34.09 ID:hUIctLPt
『あー、俺、デルタ・デルニアスだ。どうだ?機嫌直ったか?この前の平手打ちは痛かったぞ。
でもな、悪いのはお前だからな、俺は絶対に謝らんぞ!
許して欲しかったら、今度はお前が俺をパーティーに誘え、そしたらチャラにしてやるよ』


・・・よし、これだ!!と、デルタは自らの文章の会心の出来に心が躍った。
そうだ。下手に謝ると、相手を付け上がらせる。ここは一発、強気に出るのが男というものだろう。

「おまたせしました!今からメール送りますんで・・・よし、送信!・・・・・・あ?」
デルタの端末に、送信完了と同時に一件のメールを受信・・・の表示があった。




30分後。

「・・・よ、よう」
「あ、あの・・・久しぶりね」
非常に気まずい顔をした二人が、本部の受け付けの前で挨拶を交わす。
「えっとー・・・その、なんだ。あのメールなんだが」
「あ、あたしも、あのメールはちょっとした冗談っていうか・・・」
お互い言いたい事が上手く言えず、もじもじするばかりである。
そんな光景を見ていた、オペレーターの女が、少々イライラしながら、二人の沈黙を破るように言った。
「はいはい、デルタさんとレミリアさん、今日は二人でパルムですね。リーダーはどちらですか?」
パーティーを組むにしても、各種事務手続きを行う上で、リーダーを設定しなければいけないのだ。
「・・・え、リーダー・・・?面倒だな・・・お前がやれよ」
「はぁ!?なんで私がやらないといけないわけ?普通は誘ってきた方ががやるもんでしょ!」
「誘ってきたのはお前だろーが!!」
「あんたでしょ!」

・・・低レベルな言い争いが続く。そして、前回と同じく、周囲の好奇な視線と嘲笑を受ける。
その状況に気づき、先に折れたのはデルタだった。
「・・・あーったく!お前のせいで笑われてるじゃねーか!おい、てめーら、こっち見んな!」
周囲に悪態をつきながら、ミッション受領手続きを即座に済ませると、デルタは逃げるように出口へと向かった。
「星霊の導きがありますように」と、後ろからオペレーターの声が聞こえた。


デルタの後ろを、ぴたりとレミリアが無言で付いて歩く。二人とも沈黙のまま、発着場へ到着した。
立ち止まり、二人は並んだ。・・・最初に口を開いたのはデルタだった。

「・・・その、えーと・・・レミリア、悪かった」
「ううん、違う。悪いのはあたし。あたしが勝手な思い込みしたせいで」
「いや、俺もその、お前の気持ち考えずにさ・・・謝るよ、レミリア」
「・・・レミィでいいよ」
「え?」
「あたしのニックネーム。感謝しなさいよ。あたしの事をレミィって呼んでいいのは、
この宇宙でも数えるほどしかいないんだからね!」
「・・・分かったよ。感謝するぜ、レミィ。それじゃ・・・面倒だが・・・行くとするか」
「うん!行こう!」



これより始まる、デルタとレミィの二人の物語は・・・この日、この場所から、全てが動き出す。



                                                          続く

42 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 10:00:23.03 ID:8Vl4UC5v
105 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/20(月) 01:09:31.22 ID:dfbpvjEL
太陽と星霊の輝きに背いて

第六話「歩けない獣」

                                                        
目の前には、中継基地行きのゲートがある。これをくぐれば、この先へ進めば(実は一度も行った事の無い)
中継基地があり、そこからさらに継続ミッションが受領できる。
・・・この先には、何があるんだろう。そして、私がこの先へ行けるのは、いつになるのだろう。


「・・・おい、聞いてるのか?レミィ」
「え?」
「いや、さっきからボーっとしてるぞお前。どうした?熱でもあるのか?」
「ううん・・・何でもない」
「そうか」
「何でもない・・・けどさ、あのね、デルタ?」
「ん?」
「いつもここまでだよね・・・あたし、この先行った事ないんだけど。ねぇ、たまには中継基地まで行ってみない?」

一応、駄目でもともと、聞いてみる事にした。どうせ答えは決まっているんだろうけど。

「ん・・・悪い、今日はなんか気分が乗らなくてなぁ」
「・・・そう」

デルタは嘘をついている。それもミエミエの。正確には、”今日も”気分が乗らないのだ。
彼と連日のようにミッションを遂行するようになったが、基本的にはガーディアンズコロニーの
リニアライン、もしくは、このパルムの原生生物駆逐ミッションばかりだ。
そして、理由は分からないが、彼はこの先の中継基地へと行きたがらない。
・・・何か事情があるのかもしれないが、いつまでもここばかり・・・というわけにはいかない。

それに、一人で行くのは嫌だ。行く事”だけ”なら簡単だろう。だが、自分は、仲間と・・・デルタと共にこの先へ進みたいのだ。

「ねえ、あたしさ、中継基地って行った事ないんだよね。ほら、なんていうのかな〜。
初めて行くところだし、一人じゃ不安っていうかさ」

「・・・大丈夫だ。そんな誘拐犯が出るわけでもねーし、前から言ってるだろ。行くだけなら簡単だぜ」

この話題になると、必ず彼は少し不機嫌そうになる。これ以上は彼に嫌われてしまうかもしれない。
だから、私はいつも怖気づいてしまう。

「ねぇ、この先・・・何があるの?やっぱり強い敵とかもいるんだろうけどさ」
うーん、と数秒間悩んで、そして、少し寂しそうな眼をして、デルタは答えた。

「この先か・・・この先は・・・何にもねぇよ。何にも、な・・・」

そして、デルタは空を見上げながら、呟いた。

「それにな、失くす物だってさ・・・あるんだぜ」

43 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 10:00:43.46 ID:8Vl4UC5v
106 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/20(月) 01:11:06.77 ID:dfbpvjEL
「やっほ〜。元気?レミリアちゃん。相変わらず可愛いわね〜」
「こんにちは。エレナさん」
「あれ、どうしたの?少し暗いじゃない?・・・今日もやっぱり駄目だった?」
「はい、デルタってば、いっつもいっつも、私が行こう行こうって言ってるのに、頑固なんですよ」
「ん〜、やっぱり、トラウマになってるみたいね・・・」
「?・・・トラウマ?・・・ですか?」
「そうね。そろそろ話した方がいいのかも、ね」

そうしてエレナは、レミリアの正面の席に座った。レミリアは店員の方を見たが、相変わらず注文を取りに来る様子は無い。
余程店員に嫌われているのだろう、とレミリアは思った。確かに、毎日のようにここでお喋りをしているが、
一切彼女は注文をしないのだ。本当に、ブラックリスト殿堂入りの客なのだろう。

「・・・いい?これから話す事は、絶対にデルタに言っちゃだめよ?約束ね。」
「・・・はい」

”自分と会ったことをデルタには言ってはならない”と、以前に約束したが、今回もまた秘密なのだ。
そういえば、自分は彼女の事をあまり知らない。秘密の多い女性なのだなぁ、とレミリアは思った。

「彼ね・・・あなたに会う前までは、ハンターをしてたのよ。ビーストだし、最初の試験でもね、
教官が驚いたくらい、適正はズバ抜けて高かったから。元々ビーストだから当たり前なんだけど、その中でも群を抜いていたの」
「え?そうなんですか?」
「ま〜でも、あの時から基本は面倒くさがり屋で、きついミッションは嫌がってたわね〜」
ケタケタと笑いながら、エレナは昔を懐かしむような、普段は見せない表情を見せた。
「でもね、それでもなんだかんだで、彼は順調にガーディアンとしての活動を行っていたの。お金目的でしょうけどね。
あの頃は中継地点へ行って、さらに先の上位のミッションも遂行していたわ。
・・・仲間達と共に、ね。そして、その輪の中に私もいた」
「・・・仲間、ですか」
驚きである。あのデルタが、以前はハンターとして、真っ当にガーディアンとしての職務を果たしており、
さらに仲間がいたというのだ。そして、エレナが彼の仲間だった、というのだ。

「その・・・なんで、彼は今みたいになってしまったんですか?」
エレナは、眼鏡を外すと、懐から柔らかそうな布を取り出し、レンズを拭った。
んー、と眼鏡を空に向けて透かし、レンズの汚れが落ちたのを確認すると再び眼鏡を掛ける。

「ディ・ラガン・・・って知ってるかな?”ドラ”って言う人もいてるみたいだけど」
ディ・ラガン。教科書には載っていたのを覚えている。パルム原生生物の中でも、特に巨大で、
そして獰猛な生物である。口からは高熱の炎を吐き、万が一遭遇した場合、余程の実力が無ければ撤退せよ、と。

「・・・ほら、あなたも覚えがあるかもしれない。ガーディアンの駆け出しの頃によくあるんだけど、
経験を積んで戦いに慣れてしまうと、時に正常な判断ができなくなるのよ」

「正常な判断・・・ですか」
「中継地点からさらに先は・・・ディ・ラガンの縄張りでもあるのよ」

「私達のパーティーね・・・あの日、いつものようにミッションを遂行してたの。
エネミーの反応に従って草原を進んでいると・・・運が悪かったのね。・・・ディ・ラガンに遭遇しちゃってね。
どう考えても、あの時の私たちの戦力では、被害ゼロで帰還する事は難しかった。
でもね…私たちは舞い上がってたの。これを倒す事ができれば、高い評価を貰えるって。
・・・その時までの戦いは余裕で、本当に強い敵っていうのに遭遇した事が無かった。
だから、まさか自分達が狩られる側になるなんて、考えてもみなかったのよ。・・・本当に愚かね」

エレナは静かに、淡々と語った。その様子からはいつもの明るいお姉さんといった雰囲気が感じられない。
なんだかこちらの方が、素の性格なのではないか、と思える程に。

44 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 10:01:02.87 ID:8Vl4UC5v
107 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/20(月) 01:11:40.88 ID:dfbpvjEL
「悲惨だったわ。それまでの敵に通用していた攻撃が一切通じないし、奴の攻撃は想像以上の破壊力があった。
・・・それでも、どうにか持ちこたえようと皆必死だったの。
誰も死なずに、生きて帰ろうってね。・・・おかしい話だけど、その時初めて、死というものを実感したのよ。
私達はガーディアンは、普段から原生生物を殺し続けてるクセしてね」

・・・死。そう。今まであまり考えてもみなかった。確かに今自分が遂行しているミッションというのは、
危険性は限りなくゼロに近く、どちらかというと一方的な虐殺である。
SEEDに汚染されてしまった生物を”殺して”救ってやるという大義名分はあるのだが。
自分が狩られる側に回る・・・というのは考えた事も無い。

「デルタね、ビーストでしょう?・・・見た事あるかな?”ナノブラスト”っていうの。凄いのよ。変身しちゃうの。
パワーも格段に上がるから、いざって時は頼りになるんだけど・・・多分、無いでしょうね」

「そういえば・・・彼が変身するのは見た事がないです」

「やっぱり、そうよね・・・。戦いが終盤に差し掛かった頃ね、彼は、一気に追い込みをかけようと変身したのよ。
彼としては、多少無理をしてでも、早くディ・ラガンの息の根を止めたかったんでしょうね。皆を守るために、ね」

「・・・変身するとね、遺伝子レベルで肉体が再構成されるの。一瞬でね。
そして、体の中に刻み込まれた野生の本能が剥き出しになるのよ。
それで完全にってワケじゃないけど、ほとんど獣同然になって暴れまわるようになるの。
彼は、最後の力を振り絞って変身して、ディ・ラガンに突っ込んだ。そして、ディ・ラガンを攻撃したの。
でもね、ナノブラストには弱点があってね・・・攻撃力が上がる反面、打たれ弱くなる傾向にあるのよ。
武器から服から、当然、シールドラインまでもナノトランサーに収納しちゃうから。そのまま変身すると壊れちゃうから」

「だからもし、変身中に敵の攻撃の直撃を受けたらタダじゃすまない。
彼がナノブラストをする時は・・・パーティーに一人のフォースの子がいてね、その子が彼をサポートする形になっていた。
いつダメージを受けても、即座に傷を癒せるように、ね」

「当然、ディ・ラガンの前で彼が変身した時も・・・勿論その子はデルタのサポートをしようと、接近したのね。
・・・それがマズかった。
彼のの攻撃で、確かにディ・ラガンに致命傷を与える事ができたんだけど、
瀕死になったディ・ラガンの最後の一撃が、デルタではなく、そのフォースの子に向かってしまったのよ・・・」

「・・・もう、言わなくても分かるでしょう?
それからね、彼があんな風になってしまったのは。
・・・彼の判断は間違っていなかった、と、ガーディアンズのお偉いさんは判断したわ。それに仲間も誰も彼を責めなかった。
仕方の無いことだ、と。あれは事故だったと」

「・・・当然、私も彼を責めていないわ。だって、そうでしょう?彼は、私や・・・仲間を守る為に、
危険を冒してまで変身したんだから。
でも、彼には罪の意識が生まれてしまった。そして誰も、何も自分を裁いてくれない。
じゃあ自分の罪はどうやって贖えばいいのか。どうすれば許されるのか、と」

「そして・・・彼は自分を恨んだの。ビーストに生まれた自分を。そして、自分の力を。
そんな事があってから、いつも一緒だった仲間達はだんだんと疎遠になっていってね・・・そして今に至るってワケ」

45 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 10:01:29.12 ID:8Vl4UC5v
108 名前: 名無しオンライン [sage] 投稿日: 2006/11/20(月) 01:12:08.84 ID:dfbpvjEL
そこまで話して、エレナは、んーっと背伸びをした。

「あー、長くなっちゃったわね。ごめんね。辛気臭い話しちゃってさ。私らしくないかな」

「いえ・・・その・・・すいません、なんだか私が聞いてはいけないような話で・・・」

「なーに言ってるのよ?レミリアちゃんは、デルタの仲間なんでしょう?だったら、知っておく必要があるわ。
本当はもっと早く話すべきだったのかもしれないけどね」

「あの・・・私はどうしたらいいんでしょう」

「そうねぇ・・・そこらへんは・・・レミリアちゃんが自分で考えて、どーにかしてあげて。
今の彼を救えるのは・・・あなただけなんだから」

「エレナさんは・・・エレナさんじゃ、駄目なんですか?私なんて、いつも彼に迷惑かけてばかりな気がして」

「残念だけど・・・私じゃ駄目なのよ。私もあれから何度か彼を励まそうとしたんだけど、駄目だった。
私の話なんて耳を傾けもしないの。酷いでしょう?昔の仲間とは徹底的に縁を切ろうとしてる感じね。
だから、私とあなたが会っているのが秘密なのも、そういうこと。彼が知ったらいい気しないでしょうしね」

「・・・彼は、全てを過去にしてしまった。心の奥底に封印してしまった。
後ろを振り向く事も出来ない、だからこそ、前に進む事も出来ない。
・・・いい?彼に、あの時の決着をつけさせる事ができるのは、あなただけなの。
あなたの声は・・・なんででしょうね?今の彼の心に届いているみたいだから、ね?」


「それにしても不思議ね・・・あなたって。なんでかしら?」

エレナは、唐突にレミリアの顔をまじまじと見つめる。また、いやらしい事をされるんじゃないか、と、少々レミリアは身構えた。

「あのね・・・私ね・・・」
「?」
「・・・あはは、なんでもない。それじゃ、そーいうことで。後はよろしく、あの引き篭もり、どーにか直してあげてね?」

そして、いつものように、エレナは急ぎ足で人ごみの中へと消えていった。
そして、レミリアもまた、いつものように去り行くエレナの背中をぼんやりと見つめていた。
引き篭もり・・・確かに、その表現は的を得ているかもしれない。
とすると、自分は遅刻癖のある引き篭もりを治療しなければいけないのだ。それも重度の。
彼女が中継基地へのゲートを通過できるまで・・・先は長そうである。



                                                           続く

46 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 10:42:01.70 ID:8Vl4UC5v
113 名前: 1/3 [sage] 投稿日: 2006/11/23(木) 16:18:40.21 ID:PTvoRotT
「ちくしょう・・・なんだよ・・・」

あんたのせいで死んだ、と部屋主のビーストは言って
そのままパーティは解散になった。
「補助しか脳のないFTだと思ったから呼んだのに。」
一緒のパーティにいたビーストの友人は
お前のせいじゃないと言ってくれたが
俺がもっと速く動ければ間に合ったのかもしれないと思う。
いつもいつも思う。

俺はもともと他のところで働いていて
そこが潰れてしまったので
友人に誘われてガーディアンズに入ったが
急なことだったので、
スペックが低いが廉価で汎用性の高いPS2という触媒で
ガーディアンズIDを登録している。
他の本気でガーディアンズとしてやってる人々は
それぞれ高性能の触媒を使っていて、
フォトンアーツやテクニックなどのダウンロードや
武器の持ち替えが非常に速い。
普段はミッション開始時に少しPS2組が遅れるくらいだが
ブルース・ダンジョンや聖地の乱戦時など
緊急性の高いところでより動作は緩慢に、
反応は鈍く、仲間の死んでいく姿は長く長くなる。

47 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 10:42:23.01 ID:8Vl4UC5v
114 名前: 2/3 [sage] 投稿日: 2006/11/23(木) 16:19:14.26 ID:PTvoRotT
もう一人FTがパーティにいるとき
その使用するテクニックの多彩なこと、
武器を持ち替えて撃つレスタの速さ、
人々の足の速さに追いつく補助テクを見ると打ちのめされる。
自分に絶望する。
仲間はそれでいい、無理はしなくていいと言うが
一度レスタが1ブロック全く使用できなかったことがあって
申し訳なさに泣いたこともある。
そして
もう限界だと思った。

「ちくしょう・・・ちくしょう」

少しでも早くと思って使い出した片手杖を床に投げる。
からからと軽い音がする。
バカにするんじゃねーよ杖のくせに。
レスタとレジェネの入った白い杖、
今日レスタを大事なところで撃たせてくれなかった杖。
俺の目の前でどんどんみんな死んでいくんだよ。
ドンマイじゃねーよ。俺を信じて俺のレスタを
待っててくれる人もいるんだよ。
それをこんな風に

「ちくしょう・・・」

俺はガーディアンはもうできない。
もう終わりにしよう。
ガーディアンを辞めて次の生活をしよう。
いいよ。何もできないんだもの
友達には悪いけど、でも
俺が一緒にいてもお前らに何もしてあげられないんだよ
それが本当に辛いんだよ。ごめんな。

48 :名無しオンライン:2006/12/05(火) 10:42:41.69 ID:8Vl4UC5v
115 名前: 3/3 [sage] 投稿日: 2006/11/23(木) 16:19:39.24 ID:PTvoRotT
ガーディアンズ支部に行って
IDを返そうと思った。
扉に向かうと何かが服を引っ張る

PMの440だった。

みんながいらないルームグッズや
服なんかをくれて育ったPM

「お前ともお別れだよ。
 俺一人じゃどこもいけないから
 お前もあんまり連れて行ってあげられなかったね。」

しゃがんで頭をなでてやると
440は無言で一通の白い紙を
俺の手に握らせた。
「?」

そっと開くと
がさつで汚い文字があった。
見覚えのある文字だ。いつも一緒にやってるビーストの字だ。

「お前のレスタは最高だ。むしろ足り過ぎだ。
 お前の存在は最高だ。代わりはいない。
 つまらないことを気にするんじゃねーぞ!」

俺はとりあえず泣いた。
子供のように声を上げて泣く俺を
440は何も言わずに見ていた。
そしてそっとさっき俺が捨てた杖を拾い上げ、
大事そうに両手で俺に差し出した。

49 :名無しオンライン:2006/12/06(水) 01:01:14.65 ID:UmMOkIel
必要なかったかな…ともあれ保守

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